Web連載「新・棚は生きている(2)」青田恵一
書店は〝街のオアシス〟である「小売業としての書店」を目指して(2)

青田恵一

書店に未来はあるのだろうか?

2 小売店としての書店――顧客第一を貫く
 ここで改めて問おう。書店に未来はあるのだろうか? 
私はこういいたい。書店は断じて滅びない、書店の未来は必ずある、と。しかし、ひとつの大事な前提がある。「小売業としての書店」にならねばならないということだ。正直いって多くの書店にとり、いまのままでは未来があるとはいいにくい。勝ち抜いて生き残るには、「小売業としての書店」に変わる必要がある。書店人の前に人間であるように、書店である前に小売店であるからだ。
 では「小売業としての書店」とはなにか。といえば、お客さま第一を貫く理念的側面と、店舗ビジネスを確立するための事業的側面、というふたつの面が考えられる。 理念的側面からみると、「小売業としての書店」とは、小売店のひとつとして、お客さまと自店の経営に真摯に向き合い、また、お客さまとともに生き切ることで、顧客から継続を許してもらえる書店をいう。
 その実現には、3つの方針が必要になると思われる。 (1)お客さまに真摯に向き合う覚悟を持つ (2)そのうえで、お客さまの顕在・潜在ニーズの変化をつかみ、誠実に応える (3)この結果として現われる、売上と利益の増大を懸命に図り、立てた目標は必ず達成する
以下、ひとつずつ吟味していきたい。
 まず、お客さまに真摯に向き合うこと。 メーカーに比べ、小売店の有利な点がひとつある。たいていのメーカーが、列島すべて、あるいは世界を相手にするのに対し、小売店は、ひとまず店の商圏内をビジネスにすればいい、ということだ。むろんチェーン店は、チェーン店としての思想なり思惑もあろう。だが店舗1店1店の成り立ちがこの点にあることに、疑問の余地はない。
 だから商圏内のお客さまには、限界を超える誠意をもって、向き合う必要があるのだ。胸に手を当てて、みずからに問うてみよう。経営陣からアルバイターまでの全員が、これまで、一人ひとりのお客さまに対し、最大限、尊重した態度をとってきたろうか。例外はなかったか、と。経営陣がこのことを知るには、店頭で確認するしかない。が、それは果たしてできているだろうか。少なくとも今後は、腹を決めて真剣に、取り組んでいくことが求められる。
 ついで、お客さまのニーズをつかみ応えること。 それには、この意識を強く持ち、店の施策に反映させねばならない。ポイントカードを単に導入するだけでは、なにもはじまらない。客層とニーズの分析により、打ち立てた店舗コンセプトのもと、MD(商品政策)からサービスまで、一貫する統合的な小売マーケティングが実行されるべきなのである。 そして、売上と利益、とりわけ利益を拡大すること。 私が、書店の利益実態を思い知ったのは、店長になってからのこと。その店では、いくら売上を上げても、自社ビルなのに、利益が出にくかった。スタッフの数多の努力が実り、ようやく赤字経営を脱せたものの、その利益は、率も額も、雀もビックリの薄さ、少なさで、愕然として腰が抜けたものだった。 他の有名な書店も同様であった。
 業界の会合で、高名なあるナショナルチェーンの店長が「どうしてこんなに利益が少ないんですかねぇ。皆さんのお店も同じなのですか。どうしたら増やせるのか、ぜひ教えていただきたいものですが…」 と嘆くように告白した。
 その会には、地方チェーンや独立系の書店経営者が、20人ほど参加していたが、みなうつむいたままで、誰からも答は出なかった。つまりナショナルチェーンも地方チェーンも独立店も、書店の利益はめったに出ないし、出てもごくごくわずかという事情は変わらないようなのだった。
 私はこの話から「ああ、どこも一緒なんだな」と感じた。どうして、こうなってしまったのか。書店が成り立つ条件が変わったのか? おそらくちがうと思われる。そもそも成り立つ基盤など、はじめから、そうはなかったのかもしれない。いずれにせよ、どの書店も、ありとあらゆる方策を講じることで、利益率を高め、利益額そしてキャッシュフローを増やさない限り、店舗の経営に明日はない。
 そのために、なによりもまず要請されるのは、やはり、お客さまの立場に立ち切るという覚悟と思想にちがいない。 
(次回につづく)

Web連載「新 棚は生きている(3)

 Web連載「新 棚は生きている(1)


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<略歴> 青田恵一(あおたけいいち)

八重洲ブックセンター、ブックストア談などで書店実務を経験。
現在、青田コーポレーション代表取締役。中小企業診断士。
    書店経営コンサルティング・店舗診断・提案・研修指導。

<主な著書>
『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』『棚は生きている』などがある。

 
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