『発禁・わいせつ・知る権利と規制の変遷 -出版年表-』橋本 健午著

■ 未来を考える出版メディアパルNo.6

 『発禁・わいせつ・知る権利と規制の変遷 -出版年表-』

橋 本 健 午 著

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   本書は、出版を中心に、明治時代より今日に至るわが国の歴史を、年表を基に概観する目的で作成した。また、同時に知っておくべき過去のさまざまな“動き”も多く取り入れた。まだテレビはおろかラジオもなかった時代、それは江戸時代を経て明治年間(1968~1912)もつづくが、当時のおもな“マスコミ”は新聞と書籍、やがて雑誌であった。
 国民は、それらによりさまざまな情報や娯楽を得て、識字率も上がり知的欲求が増える。一方、人々の知的好奇心に応えるべくマスコミ(マスメディアとも)は、時に批判的な報道を行うため、政府や権力者にとっては好ましくないものに映る……。政府の方針に従わないものあるいは過激な思想や行動、好ましくない流行や風俗などがいつの世にも生起するのは、必然性があるからである。
 それらは生活の潤いであったり、社会の変革や制度の改善、国民によりよい生活をもたらすが、権力者は自分たちに都合の悪い報道やその発信元を取り締ろうと規制に乗り出すのも、また必然であった。
 さて、現在の憲法下では、新聞報道や出版活動を行うことに、なんの許可もいらず、言論・表現の自由は保障されているが、無制限ではない。たとえば、他人の著作物を無断で使用したり、盗用・改竄(かいざん)したりするなど著作権上の問題や、明治時代の讒謗律(ざんぼうりつ)にある“他人の名誉を傷つけたり誹謗中傷したりしてはいけない”こと、すなわちプライバシーの侵害や名誉毀損などは、他の法律によって罰せられることがある。
 また、本や雑誌は教養・知識の源泉でもあるが、娯楽の友でもある。“性”に関する情報は、古来よりどの国でも廃れることはないが、往々にして行き過ぎもある。“青少年問題”を含め、良識に基づく対応が求められるところである。

◎本書の主な目次  

第1章 表現の自由と出版規制 Ⅰ.規制と“抵抗” “プライバシー”の侵害・名誉毀損等について/知る権利とワイセツ文書・有害図書 Ⅱ.明治は遠くなりにけり、か制度は役人のために/近世の日本/メディアと取締りの歴史第2章 年表出版小史(戦前編)明治から敗戦(1868~1945)までの日本と出版状況第3章 年表出版小史(戦後編)戦後(1945年以降)の規制と追放運動、出版界の対応第4章 出版の現状と倫理規定出版界の現状“あなたの認識は”/資料・出版「倫理綱領」集/都道府県の青少年条例一覧/出版関係団体/参考文献A5判・148頁・定価1575円(3月下旬配本予定)

◎ 編集室だより

 出版メディアパルシリーズは、『No.1本づくりこれだけは』『No.2絵でみる出版産業』『No.3出版の近未来』『No.4本づくりこれだけは(改訂新版)』『No.5出版ウォッチング』など、出版の実務学を学ぶ人のための「出版の現状と課題を考え合うブックレット」として刊行されている。併せてご愛読いただければ幸いである。

 なお、姉妹編として、『新装版/棚の生理学』『新装版/書店はどうすればよいのか』『新装版/書店の人と商品はどうする』も発行されている。三冊とも、下村彦四郎氏により60年代後半に書かれた「書店論」であるが、今でもその明快な書籍販売論は、最近書かれたように心に響くものがある。