Web連載12月号「名古屋の美しい本屋さん――ザ・リブレット ラシック店」

Web連載=理想の書店を求めて

名古屋の美しい本屋さん――ザ・リブレット ラシック店

青田 恵一 

今年も全国各地の書店を数十軒訪れた。

 そのなかから、とりわけ印象に残った店を1店紹介したい。それは初夏に行った名古屋のザ・リブレット ラシック店である。同じチェーンの栄店も有名だが、回る時間がなかったため次回を期したい。  

なんという美しい本屋さんだろう! 

 加えて、若い女性向けのコンセプトショップ、というのが最初の印象だった。名古屋のラシック地下1階にある、その店の前に立ったとき、パッと見ででも、雑貨や文具がずいぶん多くていい雰囲気だなぁと実感した。物販スペースは半分、あるいはそれ以上か。とはいえ、よくあるような生活雑貨店ではなさそうである。お洒落なレターやステーショナリー、雑貨が目立ち、書店ならではの選択眼も感じ取れた。

店内をひと回りすると、小規模ながら、若い女性客に対し、充実したライフスタイルを提案する書店のように見受けられた。 

 入り口ゾーンに広大に展開するのは、雑貨や文具などの物販商品であるが、それはさておき本のほうに目を向けると、中央台の先頭で強い存在感を発揮しているのは作家棚だった。この棚は形容しがたい特長をもっていた。これがなんと、文庫と単行本、コミック!までも加わった、驚愕のジャンルミックス棚なのであった。

いままで見たことも聞いたこともない棚・・・・・・。だが、コミック作家まで組み込む必要があるのかどうか、と首を傾げたものの、すぐにはうまく消化できそうにないため、あとで当たろうと他の売場に移ることにした。 

平面図風に眺めると、店の左側3分の1(壁棚と中央台1架)と奥の壁棚の半分を本が占める。本の流れを左から順に示すと 

(1)     壁側の雑誌
(2)    その向かい側にある中央台の棚は女性向けムック・生活書のテーマ棚
(3)    さらにその裏側にあるのが例の作家棚
(4)    このとなりのテーブルはイベント用
(5)     奥の壁棚は、実用系からアート・人文系、児童書 

とつづく。一つひとつの売場がきれいで整然としている。 

さてここからはそれぞれの中味を見ていこう。

 まず(1)の壁棚は雑誌と雑貨を展示販売する。雑誌そのものは表紙見せで棚の奥側にあり、その手前には雑貨が整列している。ここでの雑誌はファッション系。物販とのハーモニーが上品な雰囲気を醸し出す。

 ついで(2)のムック・生活書棚は、料理、お菓子・紅茶、美容・ダイエット、ソーイング・アクセサリー、手芸・あみもの、ファッションが各1本、で最後に旅行関係2本の順で合計8本。

 ひとつ飛んで(4)の中央部分のイベントテーブルでは、平松洋子さんと松浦弥太郎さんなどの本が特設コーナー化。 

 奥の壁棚(5)は前述のとおり、外国文学・人文・アート系、実用系、児童書である。外国文学・人文・アート系は、写真・カメラ、デザインの本。実用系は、外国紀行とか雑貨の本。児童書はムーミン作品が中心。絵本が最下椴にずらりと並ぶ。平積みの選書もグッと来る。 

 最後にもう一度、(3)の著者棚に戻ってどんな作家が置いてあるか、隅から隅まで拝見した。するとその多くが、日本の近代文学と、若手を含めた現代文学の作家ということに気がついた。

 現代文学でいえば、村上春樹さんはじめ、朝吹真理子さん、川上未映子さん、柴崎友香さん、中村文則さん、梨木香歩さん、平野啓一郎さん、山崎ナオコーラさん、吉田修一さん、綿矢りささんといった作家たちである。これらの作家はもちろんごく一部。その作家数がものすごくて、もうご覧になっていただくしかないと思われた。 

 これらの作家を置く店は数多い、というよりほとんどの書店が陳列している。だが、これらの作家だけを並べている店は、おそらく皆無に近いだろう。どの店にもある作家の本だが、この作家たちの本しかないとなると、それはそれで大きな特長になりえる。

 ここの棚には、時代・歴史小説も企業小説も、東野圭吾さん以外のミステリー・エンターテイメント作家もなかった。その意味でこの棚は、作品のセレクト棚というよりも、作家を選ぶセレクト棚だった。選択法は、いわば〝消去法による選択〟なのであった。 

 ともあれ、こうして改めて作家棚の前に立ってみると、コミックが並列されているのも、不思議に違和感がなくなっていた。それどころか、このような対処こそがふさわしいようにも思えてきた。コミック作家も、文芸作家と同じ感性で選ぶのだから、違和感があるはずもなかったのだ。

 こんな本屋さんが全国に一軒あったっていい、おかしな言い方だが、そんなふうにも感じられた。 

 そう思いついて改めて店全体を見渡すと、驚くことに店舗イメージもガラッと変わってしまっていた。同店は、作家セレクト棚と美しい売場づくりを核に、店全体をアピールすることで、固定ファンをつかむのがねらいなのかもしれない。

 しかし、根元から考えるとこの店は、若い女性客に、読書を中心に、料理、ファッション、旅などの「お洒落な暮らし」を呼び掛ける、生活提案型の書店にほかならない。そう思って「女性客向けのヴィレッジヴァンガード」などと呼べば、お叱りをいただくだろうか。

 
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