ミャンマー難民キャンプ潜入記

 ■ 2008年11月発行 

ミャンマー難民キャンプ潜入記

吉岡逸夫著●解説:熊切拓 

出版メディアパル・オンライン書店

 15年前、伊豆高原にあるミャンマー人経営の「民宿ビルマ」を取材したことがある。民宿を建てたのは、第二次世界大戦中、ビルマ戦線で戦っていた元日本兵たちだった。うち一人は、イギリス兵から追われ、あるビルマ人家庭にかくまってもらった。彼は、ベッドの下に潜り込み、イギリス兵の捜索から逃れることができた。もし、かくまったことがばれたら、そのビルマ人家族はどんな処罰を受けたか分からない。命をかけて日本人兵を守ってくれたのだ。それから約五十年。その一家の娘さんが難民となって来日した。元日本兵は、彼女が日本で生きていけるように民宿をプレゼントした。兵士は、恩を忘れなかったのだ。
 その娘さんは、民宿を続けることで日本で暮らすことができた。彼女は、昨年日本とミャンマーの合作映画を自主制作した。資金を自分で出し、ミャンマーの映画スタッフを日本に呼んで撮影が行われた。東京で上映会も開かれた。彼女は、日本人に感謝したい、日本とミャンマーの架け橋になりたいと思ってやったという。彼女も恩を忘れなかったのだ。 
 日本兵もビルマ人一家も、なんと心のある人たちなのだろう。そして、ミャンマー人は日本人と心情がよく似ていると思った。私は、ミャンマーについてもっと知りたいという気持ちは募っていた。その思いは、昨年ついに実現できた。
 ミャンマーを知るには、アウン・サン・スー・チー氏×軍事政権の構図だけ見ていても分からない。アウン・サン・スー・チー氏も軍事政権もビルマ族であり、それは多数派の勢力争いに過ぎない。全体を把握するには、虐げられている少数民族、特に難民の中から見た方が全体像が分かる気がした。
 しかし、取材はすんなりとはいかなかった。難民キャンプに入れないのだ。このルポでは、どうやって入ったかまで書いた。それが、難民の置かれた状況を表すからだ。彼らの生活は、のんびりしているように見えるが、飼い殺しである。第二次世界大戦の時のエピソードのように、ミャンマーの人たちは、穏やかだから、大きな問題になっていない気がする。彼らは、日本人と同じように、自己主張をあまりしない民族。だれかが、彼らの状況を察してあげなければならない。そう思って、これを書いた。日本人の心と相通じるミャンマーの人たちの苦しい状況を知って欲しいと思った。 
 なお、本書の第二部として、ビルマ研究家の熊切拓さんの「ビルマ少数民族と民主化運動」ならびに「ビルマ現代史年表」を収録していただいた。今回の「ミャンマー難民キャンプ潜入記」は、熊切さんのご協力なくしては、成功しなかった。記して、お礼の言葉としたい。

2008 年10月 吉岡 逸夫


 <編集室だより>

 メールマガジンを発行する友人のメールで、吉岡さんの企画を拝見したのは2年あまり前のことである。その本「平和憲法を持つ三つの国」は2007年9月に明石書店から発行された。チャンスは、そのあとに巡って来た。戦場を駆け巡るジャーナリストの熱き想いをお読みいただければ幸いです。

出版メディアパル編集長 下村昭夫

発行:2008年11月発行 定価1260円(本体1200円+税)

発行元:出版メディアパル 発売元:高陵社書店

 
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