『棚は生きている』が生まれるまで 青田恵一

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青田恵一の現代書店学


『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』
が生まれるまで(4)

青田コーポレーション代表 青田恵一

出版メディアパル・オンライン書店  

4.『棚は生きている 』
  ―― 私の店から“パピルスの夢”を伝えたい。(まえがきより)

 本書は、『よみがえれ 書店』3部作(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)のいわば、番外編である。

 “パピルスの夢”を伝えたい
 私の店から“パピルスの夢”を伝えたい―。
 いつもいつも、そんなふうに思っていたわけではない。けれども、書店の仕事ってなんだろう、自分はなにをすべきなのか、そんなふうに想い迷うとき、このようなイメージが湧いてくるのも、たしかなことだった。
 パピルスとは、いうまでもなく、古代エジプトで生まれた―世界最古の紙―であり・英語「ぺーパー」の語源にもなっているという。詳しくいえば、「ナイル川領域に生える同名の水草パピルスを加工して作られるもので、古代には文字を書きつける『紙』の素材として最も広く用いられた。
 紀元前。三千年紀に現れ、エジプトで、次いでギリシアやローマで盛んに使用された」(ブリュノ・ブラセル著『本の歴史』創元社「知の再発見」双書8)ものである。
 では、“パピルスの夢”とはなにか。パピルスを創った人がこれに託したものとは、いったいなんだったのだろう?
 じつは「紙のようなもの」は、パピルスだけではなかった。『本の歴史』には・木の皮や石をはじめ、粘土板、蝋板、木板、骨、布、ヤシの葉、獣皮、金属なども例示されている。
 しかしこれらが「本」になりにくいのは、どれを想像しても、すぐわかることだろう。
 石の本・骨の本・金属の本…、とくると、使い勝手がよかったとは、ちょっと考えにくい。となればここで登場するのが、やはりパピルスであり、これを集めた“パピルスブック”なのであった。
 もっともその姿は、いまとはだいぶ異なっている。同書はいう。「パピルスは折り畳みにくく、表裏両面に文字を書くことができない。そこで初期の本は、パピルスを何枚もつなげて棒に巻いた巻物の形で作られた」。ということは、巻物という形ではあったにせよ、ここに、「本」に近いものが生まれたのである。
 ― 本の誕生。
 「一冊の本」ができたことで、人は、時と空間を超えて、生活の知恵とか物語のロマン、ひいては、斬新な思想や価値観といった目に見えないものを、たくさんの人々に伝えられるようになった。
 これを私は、“パピルスの夢”と呼んでみたい。

 私は、この遥かなる夢を引き継いでいるのが、現在の出版、なかんずく書店だと思っている。書店は本を販売する。だが、その姿を通して、真に売っているのは、著者が「一冊の本」に渾身の思いで書き込んだ情報であり、文化であり、価値であり、理想である。さらにいうなら、これらから得られる読者の“幸い”でもあるだろう。
 「一冊の本」に込められたものが“パピル久の夢”ならば、書店の棚は、まさしく、その夢が織り成すドラマの舞台といってよい。
 つまり棚を通して、この夢を伝えつづけるということが、書店の仕事の根にあるものなのだ。だからこそ、書店人ば、いかなるときでも、棚づくりに賭けるみずからの夢と理想を、見失ってはいけないのだと思う。
 それにしても、このことを担うには、本への“思い”に加え、棚に対する“愛と冒険”の精神、そして、棚を生かすノウハウ、スキルといったものも不可欠になるだろう。
 本書には、これまで書き継いできたコラムと、書き下ろしのエッセイを収めた。これらの短文が、“パピル久の夢”を伝えるために、わずかでもお役に立てば、これ以上の喜びはない。
 構成は、一応、章別のようになっているが、読書編集の感覚で、どのページからでも、自由にお読みいただきたい。

2006年7月14日
青田恵一


青田恵一(あおたけいいち)氏の略歴
八重洲ブックセンター、ブックストア談などで書店実務を経験。
現在、青田コーポレーション代表取締役。中小企業診断士。
書店経営コンサルティング・店舗診断・提案・研修指導。
著書に『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』『棚は生きている』がある。

発行元:青田コーポレーション・発売元:八潮出版社
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Fax注文書:注文書(pdf/220KB)
発行:2006年12月20日
本体価格:1,900円・320頁

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