『たたかう書店』が生まれるまで 青田恵一

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  ◎ 書店学研究ノート

青田恵一の現代書店学


『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』
が生まれるまで(3)

青田コーポレーション代表 青田恵一

出版メディアパル・オンライン書店  

3.『たたかう書店 ―― メガ・ブックセンターの時代に』

 『よみがえれ 書店』3部作(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)が完結する。
 第3弾は『たたかう書店 ―― メガ・ブックセンターの時代に』(仮題)。9月上旬くらいに、ようやく刊行できる運びとなった。第1 弾の『よみがえれ 書店』が「基本」を強調したのに対し、第2弾の『書店ルネッサンス』では、書店の進化と未来、ストアコンパリゾン(他店視察)、出版営業、電子ペーパーなど、書店の「進化」がモチーフになった。
 完結編の『書店は闘う』では、文字通り書店の「闘い」にスポットを当てる。
 闘いのメインテーマは、メガ・ブックセンター、万引き問題、新古書店、ジャンル別マネジメント、そして責任販売の5つ。このうち、万引き対策と責任販売は古くて新しい課題だが、周知のように、業界を揺り動かす大きな問題になっている。これらのテーマに、書店はどう取り組むべきか、現場の視点からその方向を模索した。
 メガ・ブックセンターについて、最初、疑問に思ったのは、どの規模からその範疇(はんちゅう) に入るのかということだった。異論もおありだろうが、ここでは、書籍・雑誌で500坪以上の書店としている。なにはともあれ、メガ店は、すでに趨勢となってしまった。むしろ現在は、大きな器を作ればよいという段階から、他の小売業と同様に、成功を勝ち取るためのノウハウ戦に進んでいる。大きく作りさえすれば成功するという時代は、もう過ぎ去ったのだ。そういう意味では、守る側も悲観しすぎてはならないと思う。メガ・ブックセンターには、弱点もあれば、チェーンによる力量の差もある。基本を固め、強みを作り、顧客視点を徹底するならば、生き残れる可能性は、まだまだあるといってよい。この本では、その方策についても触れた。
 万引きの件で主張したのは、予防に徹すればいいような温和なスタンスでは、これはとてもなくならないということ。少なくとも、万引きを「職業」とするプロ、もしくはセミプロは、断固として逮捕しない限り、自然に消えていくというものではない。書店はとくに万引き倒産が多い。
 さまざまな困難を乗り越えつつも、この課題にいかに立ち向かうか、書店の経営に対する覚悟が問われている。
 新古書店への対策についても、店舗マーケティングの角度から詳細に論じた。新古書店も、とくに店頭では、多くの悩みと問題を抱えているにちがいない。だが、現に読者が流れている以上、店舗という舞台で遠慮するわけにはいかない。それぞれの店の持つ強みと弱みを見極めながら、堂々と真正面から闘いたい。もっともこれは、同業の競合店に対しても同じだが。補論として、ジャンル別の対策を追加した。
 つぎの「ジャンル別マネジメント」は、店舗だけでマネジメントを組む書店には、効果を持つ可能性を秘めている。書店が、ジャンルというテナントで成り立つショッピングセンターなら、チェーンとして、一つひとつのジャンルをていねいにマネジメントすれば、業績も上がるはずだ。
 もっとも、そのためには、高いノウハウを持ち、すべての活動を的確に進めねばならない。このノウハウと方法、進め方を、試論として述べた。
 さいごは、責任販売について。この案だけが正しいとは、もちろん夢にも考えていない。だが、責任販売のテーマは全体像が見えにくいうえ、「実現可能性」の問題もある。いかに正しくても、できないものはできないという現実があることも、無視しがたいところだろう。といいながら、その「実現可能性」が高い提案にどこまで迫れたか、自信があるわけではない。せめて、責任販売とはなにかを探る“魚”になればと思っている。もっとも基本スタンスは、はっきり述べたつもりだ。責任販売の“被害者”はどうしても書店となりがちだが、そうであってはならない、と。
 責任販売とは、読者、顧客に対する共同責任を、業界三者がどう果たすかという課題だととらえたい。
 顧みて想う。なぜ『よみがえれ 書店』シリーズを書いたのか? 書店は、とくに一部の店では、システム化、管理化、チェーン化、大型化などが急激に進んだわりに、というより、反比例するように、読者視点、現場発想が希薄になりつつある。この3部作は、一方で、いかにそれを店頭に取り戻せばよいかを追いながら、もう一方では、危機に立つ書店、そのなかで苦闘する書店人の充実した生活を願って、書き継いできたものだ。書店だけでなく、取次会社、出版社、また印刷会社、製本会社、デジタル企業の方々が、未来志向で出版業界を考えるとき、わずかなりとも参考になればと思う。

青田恵一(あおたけいいち)氏の略歴
八重洲ブックセンター、ブックストア談などで書店実務を経験。
現在、青田コーポレーション代表取締役。中小企業診断士。
書店経営コンサルティング・店舗診断・提案・研修指導。
著書に『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』『棚は生きている』がある。

発行元:青田コーポレーション・発売元:八潮出版社
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Fax注文書:注文書(pdf/220KB)
発行:2005年9月15日
本体価格:2,200円・276頁

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