『書店ルネッサンス』が生まれるまで 青田恵一
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青田恵一の現代書店学

『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』
が生まれるまで(2)

青田コーポレーション代表 青田恵一

出版メディアパル・オンライン書店  

2.『書店ルネッサンス』
  ―― 進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー

  近々『よみがえれ 書店』第2弾を刊行する。題して『書店ルネッサンス ―― 進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(八潮出版社発売)。つまりテーマは、書店の進化と未来 ――。この本で、書店の進化をたどり、その未来を電子ペーパーの動向も含めて予測してみた。いささか宣伝じみるが、いやハッキリいって宣伝だが、ご案内致したい。
 前半のテーマは、書店の進化とストア・コンパリゾン(店舗視察)、そして書店からみた出版営業についてである。
 まず、書店進化論。これまでの書店への批判は、少し辛らつ過ぎたように思う。この糾弾は、「欲しい本がない」から始まり、接客が冷たい、商品知識がない、みな金太郎飴だと続き、その果てに、セブンイレブンをみよ、ヨドバシカメラをみよ、何々を見よ、これらと比べなんと遅れていることかで終わる。その一端は真摯に受け止めつつも、ここまでの言われ様もないのでは、と戸惑ってしまう。
 私は、これまでの30年、書店が目に入るとすぐ入り込んで、売場づくりを堪能してきた。その結果感じたものは、数多い非難とは少し違う。見聞した範囲でいえば、どんな書店にも店主や担当者の創意工夫が、少なくとも、ひとつは光っていた。どの業種のどの店とも同じように、短所もあったが評価すべきものも厳存した。それは新しいノウハウへの志向ともいえた。同じ本を売るものとして、その光から、刺激を受けヒントをもらい勇気をいただいた。
 度を越えるような批判を聞くにつけ、私は、拝見したお店の様々な試行を一度まとめてみたいと考えるようになった。その視点から書き込んだのが、「進化する書店」と「進化する書店コンパリゾン」の章である。このなかで、とくに有意義と考えられる店と手法を、もちろん得意の独断と偏見で取りあげさせていただいた。もっとも多くのケースは訪れたときの1シーンであり、いまは既に変わったかもしれない。しかしそれでも、これらの創意は、いままさに荒海に浮かぶ書店にとって、大いに有益と思えるのである。ここでは、進化の法則やストア・コンパリゾンの方法についても、つい一席ぶってしまったが、この辺りは後回しでも、なんら差し支えない。
 次のテーマは、「書店“乱立”時代の出版営業」。これは長い間の出版社さんとのお付き合いから、私なりに感じ続けてきたことを文章化したものだ。とくに棲み分け営業について、いくつかの提案をしている。もとより出版営業の実務もその苦労も、詳しく知る訳ではない。ただ正直いって私は、出版社の営業の方々が好きだ。原則を超えて助けていただいた熱血漢も少なくない。
 とはいえ力不足から、ご面倒をおかけしたほどのお返しはできなかった。そのお詫びも込めて、例えばこうすればどうでしょうと述べたのがこの一文である。
 本の後半では、書店、あるいは出版の未来を想像する。生き残る書店像を探る「書店に未来はあるか」と、次世代メディアが読書と出版業界をどう変えるかを追う「電子ペーパーの衝撃」が柱。
 「書店に未来はあるか」は、冒頭で13の予測ポイントを出している。その答えを探りながらお読みいただくのも、一興となるだろうか。書店と出版に未来はあるか。
 皆様はどう予測されますか?
 そしてe-paperともデジタルペーパーともいわれる電子ペーパーの件。読書専用端末をめぐる松下電器産業とソニーの対決でも話題を呼ぶ。これからの時代、電子ペーパーや有機ELなどの新デジタルメディアが何らかの形で普及するのは、間違いないと考えられる。
 問題は、このデバイスが出版業界にとって、プラスとマイナス、どちらが大きいかということだろう。これは、厄介な課題だ。コンテンツそのものは出版社が創っても、ハード端末やそれを動かすソフトは他業界が製造する。だから、すべてが思うままになる訳ではない。著者とのからみもある。法律的には著作権を持つ著者の方が強い場合もあり、出版業界がいつまでも繋ぎ止められるとは限らない。もうひとつ、大きな懸案が待ち受ける。チャネル問題 ――。次世代メディアが普及したとき、コンテンツがどう流れるかでこの業界の命運が定まる。
 最後の2章では、これらの問題を、ある程度総ざらいできるよう、基本情報から将来の業界の姿まで概観した。書店の未来もこれらを離れてあるはずがない。
 これらの文章は、評論やエッセイというよりも小冊子、いわばブックレットに近い。関心のあるものから気楽にお読みいただければと思う。

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