書評 岡部一郎著『出版人のための出版営業ハンドブック〈実践編〉』青田恵一

 ● 出版営業入門書 書評

岡部一郎著『出版人のための出版営業ハンドブック〈実践編〉』

青田 恵一

出版メディアパル・オンライン書店

  岡部一郎著『出版人のための出版営業ハンドブック〈実践編〉』(出版企画研究所発行 出版メディアパル発売 2008年)である。
 著者は、略歴によると、銀行、書店、出版社に勤めたあと、出版プロデューサとして独立とある。本書は、第1作『出版人のための出版営業ハンドブック〈基礎編〉』(出版企画研究所)が「200社を超える出版社に採用(p219)」と好評だったため、続編として刊行された。
 「老舗出版社の手法や不況下にあっても業績を伸ばしている出版社のノウハウを紹介することに焦点(p221)」を当てることがその趣旨であり、具体的テーマは「企画力の強化、営業力の強化、インターネットの活用、出版におけるマーケティング、自費出版の将来性、委託販売制度は今のままでよいのか(p219)」など。
 とくに熱が入っているのは、営業力の強化とインターネットの活用部分である。営業力の強化について、話のテコとして、ある出版社の宣伝検証を紹介する。特定書籍の宣伝費を、新聞・雑誌などのマスコミ向け(72%)、街頭ビジョン・中吊りなどの屋外広告向け(18%)、Webメイル・投げ込みチラシなどの読者向け販促(6%)、ポスター・パネルなどの書店向け販促(4%)と4つにわけた(p62)。この検証結果をみると、効果の高い順に、POPやポスターを使用した書店対策、ネットでの告知(アマゾン)、自社HP、読者対策(本に入っていたチラシ)、新聞広告となっている(p139)。
 ここから最優先課題が、書店に確実に置いてもらうことであり、そのため、書店を訪れ、担当者に内容を説明するのが重要だと指摘する。「『本』は書店が(担当者が)〝売る気〟になってこそ売れる(p64)」からである。
 著者は本書の執筆に当たり、出版社110社からアンケートを取ったが、集計によると、「ジャンル別では、ビジネス書、児童書、実用書の出版社が熱心に書店訪問をしているという結果(同)」になり、また組織体制をみると「毎月4~5人の体制で、300~500書店を訪問しているという出版社が最も多かった(p65)」という。
 いずれにしても「書店営業をしていない出版社の書籍は返品の対象になりやすい(同)」という点をあげ、書店訪問を強く勧めている。

 

ネット宣伝も「事前告知は必須」と述べ、その低価格、その持続性、そして書店に行かない層に効果的という理由が説かれる。数千人から数万人のメーリングリストを新刊案内に活用する話や、初版部数の基準結果もおもしろい(p71)。類書の実売実数、想定される読者数(想定販売部数)、書店人の直感、予想配本数、事前受注の状況、原価比率と本体価格の関係の6点があげられ、一般書は前3つ、専門書は後3つが主流という。そのあとでそれぞれに著者の改善点がコメントされる。「書店人の直感」がきちんとあるのが嬉しい。

 ネット活用にも多くのページを割く。出版社の活用法として考えられるのは4つ。オンライン書店での露出を高める、自社ホームページで告知、広告を打つ、広報リリースを積極的におこなうこと(p112)。ネットでの購入商品のトップは出版物、最少の費用で最大の効果、大手よりも中小の出版社の味方といった紹介のあと、アマゾンの「なか見検索」を強く勧めている。

 

「なか見検索」については献本一部のみで一切費用はかかりません。しかも「なか見検索」したい商品だけをアマゾンに渡せば済むのですから是非やるべきです。アマゾンのシステムを利用して自社のBOOKカタログを作るという感覚で良いのです。自社で冊子のBOOKカタログを作ることを考えればはるかに効率的だと思いませんか(p115)。