■ 書店学入門ノート
『ニューヨークの書店ガイド-アメリカの書店事情最前線-』
大久保徹也編・前田直子著
出版メディアパル・オンライン書店
ニューヨークの5番街を、セントラルパークを右手に見ながら南へ下る。プラザホテルから先、59丁目からロックフェラーセンターのある48丁目あたりまでは、ハイブランドショップが覇を競う世界一のショッピングエリアだ。ティファニー、ルイ・ヴィトン、グッチ、フェラガモなどがひしめき合っている。20年前、このわずか10ブロックにはリッゾーリ、スクリブナー、ダブルデー、ダルトンなどの書店が軒を連ねていた。 ニューヨークは言うまでもなく全米のマス・メディアの中心地である。特に出版業界では、エドガー・アラン・ポーやワシントン・アーヴィングの昔からマンハッタンに居を構えていた作家は数多く、大手出版社の本社もここにある。 5番街の一等地に書店が立ち並んだのも、そんなこの街の特色のひとつだった。しかしレン・レッジオ(バーンズ・アンド・ノーブル書店社長)やジェフ・べーゾス(アマゾン・コム社長)の書店革命を経て、現在この10ブロックで営業している書店はバーンズ・アンド・ノーブル5番街店のみである。 アメリカの出版業界はこの20年で大きく変貌した。出版社がメディア・コングロマリットへ組み込まれたこと。書店が超大型チェーン書店を中心に再編されたこと。 そして、IT化。簡単に言ってしまえば、この3点が変化の全てといえる。この変化の中で多くの書店が消えて行く。ニューヨークでも事情は同じだ。 1998年『BOOKSTORE』と言うニューヨークの独立書店「ブックス・アンド・カンパニー」の変遷の物語が出版された。この序文でウディ・アレンは「・・・あれほど質の高い書店を失ったのは不名誉なことだった。」と書いている。この本を読み、未だ残っているだろうニューヨークの「質の高い書店」を見てみたいと思った。 2002年5月、前田直子と私は、ニューヨーク書店探訪を開始した。そこで見た独立書店はすべて、「個性的」で「自己主張」があり「元気」で「出版物が大好きな書店員がいる」本屋だった。 本が好きな人なら、ぜひ、この中の一店でも訪ねてみてほしい。英語力に関係なく、その佇まいと雰囲気は必ずあなたを満足させるはずだ。出版業界の変貌を横目で見ながら、書物が好きな人と人のコミュニティーがここにある。
<主な内容> ニューヨークのユニーク書店34店と書店を支える人々の横顔を紹介した書店ガイドブック
定価:1260円 A5判 112頁
◎ 編集室だより
本書は2002年5月から、「新文化」紙に連載されてきた前田直子さんの「ニューヨークの街角から」を収録したものである。連載開始から、多くの読者の共感を得、3年間50回まで続けられ、連載は2005年5月で終了した。 本書の再編集に当たっては、「新文化」紙の連載開始から、企画・取材に全面的なご協力をいただいてきた集英社・販売部の大久保徹也さんにも編者として参加していただいた。 お二人の3年間わたる「取材と執筆」の成果を“本と書店を愛する”日本中の読者にお届けしたい。なお、本書をまとめるに当たり、新文化通信社並びに担当の瀬尾勇人記者に全面的なご協力いただいた。紙上を借りた厚くお礼申し上げます。
出版メディアパル編集長/下村昭夫
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