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◎ 今月のプログラム
 

出版メディアパル 著作権相談室
「知らないと損する著作権の基礎知識」(1)
出版メディアパル編集長 下村昭夫

著作権の相談室より

編集者からの質問にお答えして

■ 質問1
 公共の場にある著作物を写真で撮った場合、それを雑誌などに掲載する場合の謝礼は?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 公共の場とは、公園その他「人が自由に出入りできる場所」に展示されている著作物のことといえます。
 被写体の著作物の著作権が生きている場合と公有物になっている場合がありますが、たとえば、「金閣寺」の写真を利用する場合は、金閣寺を管理しているお寺に「何がしかの謝礼」を支払うことになります。
 これは財産を管理していることに関する「謝礼」と考えられ、「著作権使用料」を支払っているのではありません。なお、撮影された写真の著作権は、新たに写真家の権利となります。また、撮影許可条件の一つにお寺から、その写真を利用した場合には、「無償で提供する」ことを条件にされる場合などもあります。

■ 質問2
 学校教育での他人の著作権の利用は、認められているとのことでしたが、パソコンスクールなども同じですか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 この場合の「学校その他の教育機関」とは、営利を目的としない公教育を行う学校や職業訓練所を指し、営利目的のパソコン教室などでの著作権の利用は、「許諾」が必要になります。

■ 質問3
タイトルや大見出しなどにも著作権はあるのでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 通常「タイトル」だけには、著作権は発生しません。たとえば、「女の一生」など同じタイトルの複数の小説があります。数年前に話題になった「失楽園」なども、ミルトンの叙事詩に同じタイトルがあります。だからといって、話題の小説と、同じタイトルで、「類似本」を出す行為は、不正競争防止法などで、訴えられるケースもあります。

  ■ 質問4
 引用される文章・図版などのある程度の改変は許されるのでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 引用の基本ルールは、適法引用ということです。「主と従」の関係が確立していることが大前提で、「本文との明瞭な区別」「原文のまま(著作者人格権の尊重)」「出所明示」が守られなくてはなりません。したがって、引用部分の改変は、原則的に認められませんが、写真の一部を「部分引用」することも考えられます。

■ 質問5
 翻訳書のはずなのに、ほとんどが翻訳者の創作だったという小説がありますが、これは著作権法上の問題は無いのでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 たとえば、ショルダンの翻訳小説などの帯に「超翻訳」となど表示されています。もちろん、翻訳書も「同一性保持権」を守らねばなりません。時代背景などを変え、まったく違った小説に生まれ変わる場合は、「翻訳権」のほかに「翻案権」もクリアする必要があります。

■ 質問6
 アニメの場合、原作者と作画家がいる場合は、共同著作物ですか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 本来、小説(原作)は言語の著作物。漫画は「絵画」の著作物、アニメは映画の著作物と考えられ、別の著作物といえます。
 ところが、最高裁判決が確定した事件でに「キャンディ・キャンディ事件」があります。この場合は、漫画家の権利とともに「原作者にも著作権あり」とした判決もあります。「キャンディ・キャンディ」の場合は、もちろん、原作の「アニメ化」というとことで、両者の「合意」が成立して作品が出来上がっています。
 「キャンディ・キャンディ」というキャラクタは、原作とは別の著作物と考えられますが、この事件は、「キャンディ・キャンディ」というキャラクターは、「私の小説から生まれた」という主張が認められ、この判決では、「原作者にも著作権あり」とされました。

  ■ 質問7
 英語の教科書をつくっています。著作権のある著作物を英訳して収録する場合、「同一性保持権」の侵害になるのでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 「複製権」とともに「翻訳権」の許諾を得て翻訳するということになります。同一性保持権とは、「他人に自分の作品を勝手に改ざんされない権利」を意味します。
 ただし、「著作物の性質やその利用の目的、態様に基づいて判断してやむを得ないと見られる改変」などは許されています。
 なお、翻訳の場合は、当然、「原作に忠実に訳す」ということで、同一性保持権をクリアわけですが、日本語にない表現を日本的に訳すことは、許されると考えられます。
 翻訳された作品に「創作性」が認められる場合日、「翻訳著作権」が翻訳者に生まれます。

■ 質問8
 ホームページに自分で撮影してきたお寺の庭園などの写真を提供する場合の著作権は?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 金閣寺の事例と同じですが、自然の風景には、「著作権」は発生しません。商業利用でなければ「OK」と思われます。ポスターなどに商業利用した場合には、著作権とは別の概念(たとえば、財産管理権)から、何某かの謝礼を要求されることも考えられます。

■ 質問9
 美術作品において、ある小説の1ページを“素材”として部分的にトリミングして、イラストにコラージュした場合、その本の作者は何らかの申し立てが出来るのでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 「コラージュ」はあくまで、幾つかの異なる著作物または非著作物を組み併せて「別の作品」を作る創作ですから、先に紹介した「キャンディ・キャンディ事件」のように原作とその作品を組み併せて生まれた「コラージュ(絵)」とは、別の作品になります。しかし、利用する側は、利用される側の「権利」に留意しながら行うことが大切と思われます。
 日本で「パロディ事件」として判決が出ている有名な事件に「モンタジュ写真事件」があります。山岳写真家の白川義員氏の雪山の斜面をスキーヤーが滑走している写真に、デザーナーのマッド・アマノ氏が自動車タイヤを被せたモンタジュー写真が「パロディか著作権違反か」で争われました。14年間かかったこの裁判は、「和解」で終わりましたが、裁判所は最終的に「同一性保持権の侵害である」と認定し、写真家の権利が守られた事件です。

■ 質問10
 英字新聞・雑誌からの記事を掲載し、その記事を元に英語の練習問題を作成する場合、記事の分量によらず、すべてに版権申請をするべきですが、たとえば、3〜4行の記事の一部の場合は、引用になりませんか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 引用の基本ルールは先に述べたとおりです。「量的」な問題でなく、適法引用であることが必要条件です。なお、現在の著作権法では、「版権」という言葉はありません。著作物の複製権や翻訳権をクリアする必要があります。

■ 質問11
 手紙は公表されていないから、引用できないということでしたが、書簡集や著名人の私的な手紙をテーマにした小説はどんな風に扱われているんでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 手紙の「無断使用」で争われた「三島事件」の場合は、福島次郎氏が三島由紀夫の手紙を「剣と寒紅」という小説のなかで「公表した」ことが、「三島由紀夫の著作物を無断で使用した」ことになり、出版差止めとなりました。
 なお、「向田邦子の恋文」の場合は、著作権の継承者として、妹さんが相手の遺族の方の了承も得て、「作家・向田邦子の空白の一年」を知っていただくことが大切考えられ、公表されたものです。

■ 質問12
 著作者との間で、出版契約を翻すような紛争が起こることもあるのですか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 さまざまあります。たとえば、ある著作物をビデオ化して販売した会社が、複製権の違反で訴えられた例もあります。著作権は、「権利の束」といわれるようにさまざまな権利が輻輳して成り立っていますから、契約の範囲内での使用が重要です。

■ 質問13
 著作権について無料で相談できる機関は?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 日本書籍出版協会で「無料相談室」が開かれています。また、文化庁の著作権課でもある程度の相談には、応じてくれます。著作権情報センターでは、電話相談室を開いています。有料の著作権相談では、日本ユニ著作権センターがあります。会員社の相談は、無料ですが、悲会員の窓口相談は、有料になります。

■ 質問14
 企業のキャッチコピーに著作権はありますか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 従来、「標語やスローガンに著作性なし」が定説でした、標語応募作品「ボク安心 ママの膝より チャイルドシート」に著作性ありとの判決が出ています。キャッチコピーの著作権が広告会社にあるか企業の所属するかは、ケース・ケースで、契約によります。

■ 質問15
 書籍に限らず、世の中の商品が生まれるまでの企画書(アイデア・イメージ)は「企画書」として、書物に表されている場合でも非著作物なのでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 企画書に創作性があれば、企画書をそっくり「デッドコピー」された場合に「著作権違反」と言うことも出来ますが、ご質問の真意は、「アイデア・イメージ」が保護されるかどうかに焦点があるように思えます。著作権法では「アイデア」は、保護されません。アイデアの保護は、実用新案法もしくは特許法で保護することになります。

■ 質問16
 印税を著作権使用料というそうですが、転載や引用の謝礼は?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 適法な引用は「許諾なく」行えます。この場合の謝礼は、特に必要ありません。転載許諾の場合は、そのときの契約によります。たとえば、新聞の記事を書籍の一部の転載したいとき、使用目的・発行部数などにもよりますが、通常「3000円〜5000円」程度の使用料を使用料を支払うことになります。

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