渦(出版界の内と外)


1.8   電子メディアと本の共存共生

花 子太郎さん、インターネットが話題になっているけど、出版界にはどんな影響があるの?
太 郎インターネットは一口でいうと、“ネットワークのネットワーク”と表現されるように、世界中のコンピュータがネットワークで、「いもずる」のように結ばれているんだよ。
花 子よく、”ウェブ”といわれているのは、何の略?
太 郎ワールド・ワイド・ウェブの略称で、webは「くもの巣」という意味だよ。 最近のデータでは150カ国、8000万人の人がインターネットを利用しているといわれている。とにかく、いままでのメディアと違って、情報の受信者が発信者でもあるので、メディアの大革命ともいえる。
花 子電子メールでのコミュニケーションが大流行だけど、他には、どんな機能があるの?
太 郎代表的なインターネットの機能は、電子メールで、若者たちのコミュニケーションの重要な手段になっているし、業務用でもなくてはならない重要な手段の一つになっているね。二つ目にはニュースグループと呼ばれる機能でさまざまな専門の情報の提供手段になっているね。三つ目がさきほどのWWWで、インターネットのホームページには、実にいろいろな情報があふれているんだ。
花 子インターネットで本がなくなるという人もいるわね。
太 郎私は、電子メディアと本は、共存共生すると思う。今、起こった情報を直ちに、世界中に発信するには、インターネットは便利だけど、“本”の世界は、単なる情報だけではなく、思考型メディアとしての役割が大きいからね。インターネットの推進側からも、「インターネットは空っぽの洞窟」という批判が出るくらいだ。
花 子インターネットの問題点は、別の機会にまたくわしくお話しいただくとして、書店の店頭に、「サン・ジョルデの日」というポスターを見かけたけど、どんな日なの。
太 郎 スペインのカタルーニアの守護聖人で知られるサン・ジョルデのお祭り(4月23日)の日に、「男は愛する人に“赤いバラ”を贈り、女は“本”を贈る」という習わしにあやかった“本のお祭り”の日だよ。
花 子あら、素敵な習慣ね。そう言えば、スペインを旅行したとき、マドリッドのスペイン広場に”ドンキホーテ”で有名なセルバンテスの記念碑(写真)があったわ。
スペインでは、セルバンテスは、”文学の父”と尊敬されており、4月23日がセルバンテスの命日に当たるんだとガイドさんが説明していたわ。
スペインはピカソやマチスを産んだ国だし、アルハンブラ宮殿やガウディの聖ファミリ教会のように200年の歳月を経て、建設されている教会があったりして、夢の多い国だわね。


©1999年 Shimomura