マルチメディアと出版の近未来


3.2  DTPの普及と印刷・出版

*3A宣言とDTPの登場
 1985年に、アメリカのアルダス社(現在は、アドビ社に吸収合併されている)が、マッキントッシュ版のレイアウトソフト“ページメーカ”を発表したときに“デスク・トップ・パブリッシング”という思想を提唱したのが、DTPの始まりといわれている。
 DTPの誕生には、アップル社が84年にマッキントッシュにマウス(ネズミのような形をした小さな入力装置)による使い勝手のいいGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェイス)環境を備えたコンピュータを発表したことと、アドビ社が、従来のギザギザ文字のドットプリントから、ページ記述言語としてのポストスクリプトタイプのフォントを発表したことの三つの条件がそろって初めて可能になったといわれている。三社の頭文字をとって、通称、3A宣言と通称呼ばれている。
 これらの条件が整うことにより、パソコン上で、単に文字データが扱えるだけでなく、図版や静止画を含んだイメージ情報全体が、一つのディスプレイ(テレビ画面のような表示装置)上で再現することが可能になったわけである。
 見たままの画像が,レーザプリンタを使って文字も図形も版下として得られる機能のことをWYSIWYG(ウィジィ・ウィグ=what you see is what you get)と呼ぶ。
 マッキントッシュ(Mac)によるDTPは88年ごろに日本では普及し始めた。Macだけではなしに、住友金属のEDIAN(UNIXマシン)やWindows系のコンピュータも印刷現場では導入されている。
 1996年秋の、Windows95の爆発的な普及により、パソコン市場はWindowsの圧勝といえますが、DTPの世界では、Macが今のところ、主流といえる。
 Macが生まれながらにしてDTPの思想を身につけていたこと、操作性の良さに加えて、ページメーカやエキスプレスクォークなどのレイアウトソフト、写真を処理するフォトショップや線画を処理するイラストレーションなどのソフト環境が依然、Windowsに比べ優れている点と、全国に約400社あるといわれる出力ショップなどの周辺環境でも優位に立っているからである。
 出版・印刷の世界では、DTPは、Mac中心とはいえ、ビジネス用の商業データは圧倒的にWindowsデータであり、組版ソフト、フォント、出力センターなどの周辺環境の整備に伴い、急速にWindowsDTPが普及するものと予測される。


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