渦(出版界の内と外)


3.9  再販制と公取リポート

花 子公正取引委員会の再販制に関する「最終報告書」が発表され、話題になっているけどどんな内容なの?
太 郎正式には、2001年(平成13年)3月23日付けで公表された「著作物再販制度の取扱について」という文章で、1998年と1999年の二つの報告書「著作物再販制度下における関係業界の流通・取引慣行改善等の取組状況等について」以降の最終報告書で、「廃止についての国民的合意がない」として、「廃止の方向性は、変わらないが、当面維持する」としている。
しかし、出版に関する項目としては、「出版社や書店等における非再販品の取扱いの拡大等」自主的な再販制度の弾力運用や流通・取引慣行改善等の取組については、一定の評価をしながらも、なお、いっそう「再販制度の弾力的運用」を求めている。
花 子どんな点が評価されているの?
太 郎特に「インターネット等を利用した通信販売や直販等流通ルートの多様化の進展等」新しい販売形態が拡大しており、「これによるメリットが、価格設定の多様化等を通じて一般消費者に還元されていくことが望まれる。」としているね。
花 子でも、インターネットの利用と再販制度の問題とは、直接結び付きがあるのかしら?
太 郎インターネットを利用する読者の多くは、「利便性」を評価してのことだし、注文品が、早く「手に入る」点が受けているといえるね。
花 子注文品は、なぜ、一〜二週間もかかるのかしら?
太 郎一定の改善は、業界でも努力しているんだが、基本的に日本の出版流通は委託制が基本になっており、新刊配本や常備寄託等、「大量の本の配本」には、優れた機能を発揮するんだけど、注文品は、流通コストや取引条件の都合で、「小部数で低価格」の商品をそのルートに上乗せして「送品」せざるを得ないところに問題があるんだよ。
花 子他には、どんな点が指摘されているの?
太 郎「書店等によるポイント制等を利用した顧客サービスの導入」を強く推奨しているね。
花 子量販店などで実施しているポイントカードのこと?
太 郎そうだよ。しかし、ポイントカードを導入して、事実上の「割引制」が可能なのは、好条件の保証された競争力の強い大型書店やナショナルチエーンといわれるような多店舗展開が可能な複合型書店等で、地域に根ざした中小の書店は、廃業に追い込まれていくことは、「目に見えている」ことだといえるね。
花 子本当ね。日本の出版文化を地方の町々で支えてくれた書店さんの発展なしには、出版界の発展もないわね。再販制を守る運動が改めて必要なのね。


©2000年2月/2001年8月 Shimomura