渦(出版界の内と外)


3.8  出版の産業状況と成長率

花 子出版の産業動向を長期的に見ると、どんな状況だったの?
太 郎出版科学研究所の資料によると、1960年から1975年までの16年間は、2桁成長。1976年から、1996年までの21年間は、1桁成長、1996年から2000年までの4年間は、マイナス成長となっている。これを成長率で見ると、80年代は40.4%の成長率、90年代は5.1%となる。
花 子でも、最近でも「五体不満足」や「だからあなたも生き抜いて」など話題の本も多かったと思うんだけど。
太 郎特化的に話題になるミリオンセラーが出て、全体を引っ張ったんだが、全体としては、失速した感じだね。リストラの流行で、サラリーマンの財布の紐が硬くなったというところかな。
花 子でも若い人は、インターネトや携帯電話などと消費傾向は、衰えていないわよ。
太 郎そのとおりだね。パソコンの一年間の出荷台数も1000万台を超える勢いだし、それに引きずられる格好で、パソコン関連の書籍や雑誌の発行点数や販売部数も伸びてきた。
花 子でも、パソコン書を担当している私の友人は、パソコン書は、本の寿命が短すぎると嘆いていたわ。
太 郎本当だね。新しいソフトが2年サイクルで出されるので、一部のヒット商品以外は、投資倒れの感が各社とも強いね。とりわけ、初心者向きのマニュアル本に急速な陰りが見えてきたね。
花 子昨年は、出版界もオンラインショッピングや電子書籍などの話題が多かったわね。
太 郎そうだね。アメリカのアマゾン・コムの成功に刺激される格好で、インターネットを利用したサイバービジネスが活発になってきた。宅配便との提携や支払方法など、ネックになる問題が山済みしているとはいえ、少しでも新しい潜在読者を掘り起こそうと、各社とも必死の努力をしているところかな。2000年度のネット書店の全体の売上げは、100億円程度と見られている。
花 子電子出版のほうは、どんな状況なの?
太 郎従来のCD-ROMや電子ブックに加え、「電子文庫パブリ」や通信衛星やインターネットで書誌情報を配信する「e-BOOK」も配信を開始し、無料のメールマガジンが活発になり、フイルムレスのオンデマンド出版も話題となった。本格的なデジタルコンテンツの提供は、これからの課題といえる。
花 子従来の本であれ、デジタルな本であれ、『人は本なしには生きられない』というは、「再販制の見直し」問題も「当面は存続」との公正取引委員会の結論も出たことだし、、多難な状況とはいえ、21世紀は、夢のある産業にしたいわね。


©2000年1月/2001年8月 Shimomura