渦(出版界の内と外)


3.4  委託制と再販制の動向

花 子日本には、出版社や書店の数は何社くらいあるの?
太 郎「出版年鑑」(出版ニュース社)の1995年度版によると、出版社の数は、4487社となっており、うち75%に当たる3316社が東京に集中しており、大阪214社、京都135社、神奈川74社、愛知54社、埼玉45社となっているね。また、取次は42社、日本書店組合連合会加盟の書店数は、この10年、年々減り続けてついに、1998年には1万軒を割り込み、9800軒余り( 通産省の「商業統計」では26000店余り)となっているね。中小書店の転廃業は依然続いており、 日書連の加盟店数の減少傾向は同様で、2000年度は9406店となっている。
花 子再販制と並び出版流通を支える委託制とは、どんな制度なの?
太 郎委託制度とは、出版社が取次や書店に対し出版物を配本し、販売を委託し、書店は委託された出版物を販売し、一定に期間内であれば、返品できる制度のことだよ。
 書籍の委託には、新刊委託は通常105日間、長期委託は4ヶ月〜6ヶ月間、常備寄託は通常1年間(本来は「委託」であるが、税法上社外在庫として扱われる)の三つがあるんだよ。
 雑誌の委託期間は、週刊誌は45日間、月刊誌は60日間、コミック・ムックは60日間となっているよ。 委託期間の過ぎた商品や、注文品、買切品などは、売れ残っても返品できないことになっている。
花 子再販制の議論は、結局、どうなったの?
太 郎公正取引委員会は1998年3月31日、「著作物の再販制の取り扱いについて」の見解を公表し、「競争政策の観点からは廃止の方向で検討されるべきだが廃止された場合の影響について配慮と見当が必要」と当面、出版物など6品目の再販制の運用が容認されたが、同時に、「再販制が硬直的・画一的に用いられている傾向があり、時限再販や部分再販などの弾力的運用」が必要と、業界の自主的努力を促す見解を公表したんだよ。その後、公正取引委員会は12月2日付で「著作物再販制度下における関係業界の流通・取引慣行改善等の取組状況等について」を公表、平成13年3月には、業界全体の「弾力運用」などに対する一定の努力やインターネットなどを通じての出版流通の多様化を評価し、「廃止の方向は変わらない」が「当面は再販制度を維持する」との見解も公表している。
花 子当面は、再販制維持ということで、落ち着いたわけね。
太 郎業界全体が、広く消費者と対話し、再販制の必要性を訴えるとともに、出版流通の抱える諸問題の改善の努力を怠らないことが、今、求められているね。


©1999年/2001年8月 Shimomura