渦(出版界の内と外)


2.9  eラーニングと教育革命

花 子eラーニングという言葉が教育分野で流行しているようだけど、どんなシステムなの?
太 郎2000年11月に「IT基本法」が成立し、2001年1月に「e-Japan戦略」が発表された。その基本計画の決定を受け、にわかに注目されてきたのが、インターネットを駆使した教育革命、eラーニングということなんだよ。
花 子要するにインターネットを駆使した教育システムのことなの?
太 郎2000年11月の大学審議会の答申では、「インターネットを使った大学学部卒業資格の124単位中60単位まで認める」ことが答申され、2001年度から、実施されているよ。 また、通信制の大学では、いわゆるスクーリング(直接対面授業)なしに、「124単位全部をWeb教育で取得できる」ように答申されている。
花 子いわば、バーチャル・ユニバーシティが実現するということなのね。
太 郎「eラーニング白書」によると、eラーニング(e-Leaning)とは、「ネットワークによる遠隔教育」をいい、また、インターネットやイントラネットを利用したWebによる学習教育システム」のことをWBT(Web Based Training)というが、日本でも、インターネットを駆使したバーチャル・ユニバーシティが実現する法整備ができたということになるね。
花 子アメリカなど他の国の実情はどうなの?
太 郎このWBTの実現により、「双方向性を持ち、自由な時間に学習が可能」になり、「何時でも、何処でも、誰でも利用できる」ネットワークによる遠隔教育が、今、世界的規模で推進されている。すでに、アメリカでは、4年制の公立大学の70%がeラーニングのよる遠隔教育を実施しており、MIT(マサチューセッツ工科大学)では、その教育カリキュラムをインターネット上に公開しているという。
花 子日本の大学でも研究が進んでいるの?
太 郎大学だけでなく、日本の企業でも企業内の再教育システムにeラーニンを採用しようとする動きが活発になっているね。
花 子どんなシステムが研究されているの?
太 郎大学審議会の答申によると、「文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもの」「電子メールの交換などの情報通信技術を用いたり、オフィス・アワー等に直接対面したりすることによって、教員や補助職員(教員の指導の下で教育活動の補助を行うティーチング・アシスタントなど)が毎回の授業の実施にあたり、設問解答、添削指導、質疑応答等による指導を行うもの」「授業に関して学生が相互に意見を交換する機会が提供されているもの」などとなっている。
花 子ハードメーカーや出版社での取り組みは?
太 郎「e-Leaning World 2001」がすでに開かれるなど、開発業者の動きは活発化してきている。さて、出版社として、新しい「教育・教材にどのように対応できるのか」が問われていることになるが、システム的に高度な「ホームページ」作りといえ、「動画、ナレーション、静止画、画像、アニメーション」と、「インターネットを使った教育映画」作りに譬えることができるね。合わせて、知的財産権(著作権)についても高度な知識が要求されることになる。
花 子私たちには、未経験の世界なのね。
太 郎システムそのものの技術課題は未経験とはいえ、教育カリキュラムを考えるのは、教育の最前線にいる先生たちであり、その先生たちと協力して教育教材を開発してきた教材編集者たちなのだから、今までの経験と知恵を生かせば、新しい課題に挑戦することは、充分に、可能性があるといえるね。花子さんたちのような、インターネット時代の若い編集者の挑戦に期待したいね。


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