1.1 本の歴史とグーテンベルグ聖書
花 子 | ある本に、世界最古の印刷物が日本にあると出ていたけれど? |
太 郎 | それは法隆寺などに保存されている『百万塔陀羅尼経』という経文が、770年頃に完成されたとあるから、木版(銅製説もある)による活版印刷の最古のものといえる。 最近の学説では、韓国の仏国寺には、750年頃、開版されたと推定される経文があるとのことだよ。 |
花 子 | それ以前には、書物はなかったということなのかしら? |
太 郎 | そうじゃないよ。古くはメソポタミアでは7000年も前から、良質の粘土を書写の材料に使っていたし、ナイル川の上流に繁茂していた水草からパピルスが生まれ、エジプト文字や素敵な絵が描かれている。 エジプトの考古学博物館に残されたパピルスを見ると、5000年の時空間を超えた古代人のメッセージに圧倒されるよ。 |
花 子 | そのパピルスから英語のペーパー(紙)という言葉が生まれたと教わったわ。 |
太 郎 | 今日でいう“紙”を発明したのは、後漢の和帝(89〜105年)時代の中国で、木皮、麻くずなどの植物繊維を材料にしたものだという。 ヨーロッパでは、パピルスの代わりに羊皮紙などが書写の材料として長く使われ、イタリアの教会などの図書館や宝物館にも、羊皮紙に描かれた聖書が多く見られる。 |
花 子 | でも印刷技術が発達したのは、グーテンベルグ以降なんでしょう? |
太 郎 | そう、グーテンベルグが、ワイン製造のぶどうしぼり機にヒントを得て、印刷機(プレス機)を発明したのが1450年のことだから、その前は一般的に写本が中心だった。 |
花 子 | グーテンベルグ聖書というのが有名ね。 |
太 郎 | ロンドンの大英博物館にいくと、その時代の書物がたくさん見られる。当時の「THE BOOK」というのは、聖書を意味しているんだよ。 |
花 子 | 日本では、いつ頃から出版が盛んになったのかしら? |
太 郎 | 室町時代から町人階級の小さな版元が現れ始めるが、盛んになったのは、江戸時代の享保元年(1716年)以降だといわれる。活版印刷の導入は明治に入ってからで、本木昌造らによる活版印刷の成功により、洋式本が大量に印刷されるようになった。 |
花 子 | 本の歴史もいろいろあるのね。私もロンドンへ行くきかいがあたら、大英博物館へよって、グーテンベルグの『四十二行聖書』を見に行ってみよう。 |
©1998年 Shimomura