出版メディアパル(Murapal通信)


毎日新聞メディア欄連載「出版ウォッチング」(3月号)

 2003年4月から「毎日新聞のメディア欄」(隔週の火曜日発行号)に「出版ウォッチング」を連載することになった。このページでは、4月以降に掲載された「出版ウォッチング」月ごとにご紹介することにする。
出版メディアパル編集長 下 村 昭 夫

 著者と読者の皆さんの架け橋として本を生み出している出版界の「こぼれ話」を月2回・隔週の火曜日の連載で、ご紹介することとなった。ここでは、2004年3月掲載分をご紹介する。

(20)広告と雑誌 (2004年3月2日号)
 広告代理店・電通が公表した「2003年日本の広告費」によると、日本の総広告費は、5兆6841億円、(対前年比で99.7%)で、そのうち、雑誌広告費は4035億円(対前年比99.6%)となっている。
 雑誌広告費の業種別では、構成比の50%を占める上位5業種のうち「化粧品・トイレタリー」が増加、「ファッション・アクセサリー」が微増、「流通・小売業」が増加となっている。
 この広告費、03年の雑誌の推定販売金額、1兆0322億円(2.9%減)の39%にあたる。
 ジャンル別広告費で見ると、「女性誌」「ティーン誌」などが前年を上回ったが、「番組・都市情報型誌」「パソコン誌」などは減少となっている。
 マスコミ4媒体(新聞・テレビ・ラジオ・雑誌)の広告費が対前年比で、微減しているのに比べ、インターネット広告費だけは、1183億円(対前年比140%)と大幅な増加となっている。
 インターネットは、雑誌媒体が有料で提供している情報を無料で提供することでも雑誌のあり方に影響を及ぼしている。
 また、町の中には、駅構内やコンビニなどで、280誌5800万部といわれる無料の「フリーマガジン」が大量に配布されている。
 広告収入だけで維持されているフリーマガジンには、求人マガジン、クーポンマガジン、エリア情報誌などさまざまな形があるが、地域密着型の無料情報が、「情報は有料」という雑誌のあり方に大きな影を落としている。



(22)倫理綱領と出版 (2004年3月16日号)
 全国の書店で構成される日本書店商業組合連合会の「出版販売倫理綱領」が41年ぶりに全面改正された。「倫理綱領」とは、その産業のあり方などを指し示した規範である。流行の言葉で言えばマニフェスト(宣言)ということになる。
 「われわれ書店人は、出版物の社会的使命の重要性を深く認識し、その円滑な普及に努める。」
 「われわれ書店人は、日本国憲法で保障された言諭と出版の自由を擁護する。」
 「われわれ書店人は、出版物の販売にあたり青少年の健全育成に配慮するとともに、積極的に読書推進運動を展開する。」「われわれ書店人は、読者の要望に応えて出版物の迅速な入手に努め、誠実に販売の使命を遂行する。」
 「われわれ書店人は、再販制度を遵守するとともに、出版社、取次会社、小売書店が平等の立場で意思の疎通を図り、協調して所期の目的を達するよう努める。」
 出版界の倫理綱領には、日本書籍出版協会・日本雑誌協会の「出版倫理綱領」、日本雑誌協会の「雑誌編集倫理綱領」、日本出版取次協会の「出版物取次倫理綱領」もある。
 これらの宣言は、戦後、露骨な性表現や著しい残虐性を助長する出版物や誹謗・中傷あるいはプライバシーの侵害など社会的問題に対応するために制定された自主規制で、それぞれの立場から、文化の向上と社会の進展に寄与すべき出版の役割や社会的責務を提言している。
 いま、再び、不健全図書追放の名の下に、出版の取締り強化が進む中、「倫理綱領」の持つ意味を改めて考えてみたい。


©2004年 Shimomura