出版メディアパル(Murapal通信)


毎日新聞メディア欄連載「出版ウォッチング」(4月号)

 2003年4月から「毎日新聞のメディア欄」(隔週の火曜日発行号)に「出版ウォッチング」を連載することになった。このページでは、4月以降に掲載された「出版ウォッチング」月ごとにご紹介することにする。
出版メディアパル編集長 下 村 昭 夫

 著者と読者の皆さんの架け橋として本を生み出している出版界の「こぼれ話」を月2回・隔週の火曜日の連載で、ご紹介することとなった。

(1)本の定価と消費税 (2003年4月8日号)
 本の未来を語る前に、六年連続マイナス成長下にある「出版」をめぐる厳しい現実をお話しなければならない。
本が売れない要因のいくつかに「不況感・携帯電話の通信費増・少子化・新古書店や漫画喫茶の影響・図書館での貸し出し数の増加」などが挙げられている。
 加えて、今、出版界には「消費税の総額表示」問題が暗雲を漂わせており、「悪夢の再来」と衝撃が走っている。 一九八九年の消費税導入時、出版業界は、定価表示を巡り「内税」か「外税」で大揺れし、公正取引委員会の意向もあって「内税」を採用した。
 その結果、多くの在庫品の「定価表示」の変更のため、カバー・帯・売上げカードなどの制作費に一社あたり三六二三万円(日本書籍出版協会調べ)もの多額の “無駄な出費” を強いられ、やむなく絶版せざるを得ないなど経済的にも文化的にも大きな痛手となった。
 九七年の「消費税率五%に引き上げ」の際、本体価格を基本に、書籍は「外税表示」(本体価格+税)、雑誌は「内税表示」を採用し、今後、税率変更に伴う “無駄な出費” を強いられことのない定価の表示方式となった。
 今国会で、価格表示について、 “消費税を含めた総額表示” (内税表示)を義務付ける平成十五年度の「税制改正法案」が可決された。一年間の経過期間後、二〇〇四年四月一日から、「総額表示」の義務付けが始まる。
 もちろん、「消費税率の引き上げ」を視野に入れての痛税感を和らげる “姑息な手法” であることは言うまでもない。
不況のさなかの「消費税率引き上げ」を睨んだ税制改革。改革の 二文字=@に騙されるのは、もうこれくらいにしたい。



(2)「世界 本の日」とブックフェア (2003年4月22日号)
 4月23日は、スペインのカタルーニア地方の守護聖人で知られる「サン・ジョルディ」のお祭りの日。この日、「女性は、愛する人に本を贈り、男性は愛する人に、バラの花に麦の穂を添えて贈る」という風習がある。
 奇しくも、この日は、「ドン・キホーテ」で、お馴染みのセルバンテスの命日に当り、 “バラ市” とともに “本の市” が開かれる。
日本でも、この習わしにあやかって、日本書店商業組合連合会が「本のお祭りの日」として “愛のサン・ジョルディキャンペーン” を始めたのは、86年のこと。95年のパリ・ユネスコ総会で「世界 本の日」とする宣言が採択された。

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 今年も、「東京国際ブックフェア2003」が、東京・有明の東京ビッグサイトで4月24日から27日まで開かれる。
 世界25ヵ国・550社のさまざまな「本との出会い」の場となり、海外の著作権取引の場となる。
 26日と27日の一般公開日(有料)には、会場内で読者の皆さんへ「児童書・実用書・文芸書・自然科学書・人文社会科学書・学習参考書・コミック」などの特価セールスも行われ、洋書1万点・5万冊の “バーゲンセール” もあり、「本好き人間」には、たまらないお祭りの場となる。
 ブックフェアは本づくりの「技術革新の紹介」の場でもあり、「電子ペーパー」や「電子辞書」など電子書籍の“携帯端末” の新顔との出会いも楽しみの一つである。
 ブックフェアのルーツは古く、18世紀末のライプチッヒで開催されたのが最初といわれている。
現在、世界各国30ヵ所以上で開催されており、毎年、秋にフランクフルトで開かれる “ブーフメッセ” が最大規模の国際的な本の見本市となる。


©2003年 Shimomura