マルチメディアと出版の近未来


4.8  マルチメディアの産業基盤<

*未成熟な産業規模
 マルチメディアの産業規模は、『マルチメディア白書(1999年版)』(財団法人・マルチメディアソフトウェア振興協会編)によると、1998年度の全体で7兆1359億円に達するものとみられている。
 ハードウエア関連3兆3395億円、パッケージ型ソフト1兆3020億円、ネットワーク型ソフト2498億円、サービス関連2兆2446億円となっており、うち、CD-ROM関連は、3万5400タイトルで、ゲーム4504億円、アダルト130億円、映画・音楽168億円、リファレンス269億円、教育・教養娯楽215億円、ナビゲーション47億円、カラオケ80億円などとなっている。
 また、出版科学研究所の調査によると、96年に刊行されたCD-ROM書籍は422点となっている。
 電子ブックの販売価格は2800円〜3万円と幅があるが、平均定価で7000円程度である。最もヒットしたのは、『電子広辞苑』(岩波書店)で、出荷数で30000セットを超えている。続いて、『大辞林』(三省堂)、『現代用語の基礎知識』(自由国民社)などで、電子ブックソフトの販売累計は120万枚を超えている。  産業的基盤はまだまだ未確立といえ、その発展はハードシステムの普及、ソフトの開発に左右されるといえ、250タイトルを超えたといっても、出版物全体の新刊点数約60000点、流通している書籍数40万点と比較すれば、2兆5000億円の中の一部分でしかない。この程度の出版では、出版文化全体の中で“電子ブック”でなければというような魅力も生まれてはこない。しかし、書籍にはない利点も多いわけだから、“本の世界”を補完するような形で電子メディアは成長していくと思える。


©1998年/2000年 Shimomura