マルチメディアと出版の近未来


4.4  電子メディアと著作権

*著作物の私的利用と海賊版
 知人の一人から、中国に返還前、香港の一角にあるコンピュータソフト店で手に入れたという“海賊版ソフト”を見せられた。パッケージの裏側に印刷されたソフト名をみると、日本では5〜20万円もするソフトが複数収録されているCD-ROMである。価格は、30〜50香港ドル(約400円〜800円程度)、ソフトを開発したオリジナルメーカの怒りが理解できる。この町ではコンピュータソフトだけでなく、日本のアダルトソフトの“海賊版”も多いとのことである。
 電子メディアソフトの特徴の一つは、複製・改変が簡単にできてしまうことである。日本でも、一部のコンピュータマニアによる“海賊版ソフト”を販売する事件も跡を絶たないが、1999年年8月には、インターネットを通じて会社ぐるみで、“海賊版ソフト”を販売したとして会社経営者が検挙される事件が起こっている。いずれも、一度だけ書き込み可能なCD-Rなどにより、簡単にコンピュータソフトの複製品の製造が可能になったことが、引き金になっている。
 現行の著作権法では“私的利用”の複製は自由にできるが、DAT(ディジタル・オーディオ・テープ)のように、ハードに“著作権法上の使用料”を上乗せすることで、私的利用に対する“報酬請求権”を認めた例も浮上している。
 著作権は基本的には、著作財産権と著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)から成り立っており、著作物を独占的に支配し、排他的に利益を受ける権利を意味しており、電子メディアにおいても著作権をいかに保護するのかを考えると同時に出版者の権利としての複製権(出版権)の確立のために努力しなければならない。


©1998年/2000年 Shimomura