マルチメディアと出版の近未来


4.3  ゆらぎの時代の著作権

*インターネット時代の著作権
 1996年12月、WIPO(世界知的所有権機関)では、著作権に関するベルヌ条約を補強する新条約を採択した。
 その新条約によると、「コンピュータプログラムやデータベースの著作権の保護」「著作物の頒布やレンタルに関する著作者の許諾権の承認」「写真の著作物の保護期間の拡大」「コピー機能解除装置の販売禁止」「著作権に関するデータベースの改ざんの禁止」などが採択された。
 この採択を受け、写真の著作権が「公表後50年」から、「死後50年」(国際的には死後70年)へと改正された他、ネットワーク時代への対応を含んだ次のような「改正著作権法」が1998年1月から施行された。
 「ネットワークへの接続行為について、実演家及びレコード製作者に許諾権(著作隣接権)を認める」「著作物をネットワークに接続する行為を『送信』に含め、著作権が及ぶこととする」「同一のLAN(企業内情報通信網)内でのコンピュータプログラムの送信を『送信』の保護に含め、著作権が及ぶこととする」「無線によるインタラクティブ送信について新たな規定を設け、概念上、有線との区別は行わない」などとなっており、「公衆送信権並びに送信化可能権」という新しい概念が著作権法に規定された。その後、1999年10月改正では、プログラムのコピープロテクション解除装置の製造・販売を禁止することなどが決められた。
 最新の動きでは、アメリカ国内のコンテンツ産業と通信産業の激しいロビー活動が行われており、規制の強化を求める映画や音楽のソフトウェア業界と、厳しい規制は通信サービスの高コスト化を招くとする通信産業界での綱引きが活発化してきており、インターネットをめぐる著作権の動きは、なお、流動的である。
 このように、著作物も著作権の概念も、ゆらぎの時代を迎えているといえるが、“ゆらぎの時代”だからこそ、著作権を中心とする知的財産権法の基本をしっかり理解する必要があるといえる。


©1998年/2000年 Shimomura