マルチメディアと出版の近未来


2.4  電子ブックの機能

 CD-ROMを利用するには、CD-ROMに収録された情報をドライブ(レコードのプレーヤに相当する)を通じてパソコンに送り、検索用のソフト(FD)を使って、パソコンのディスプレー上に文字や画像を呼び出して使うことになる。最近では、パソコンにCD-ROM用ドライブ内蔵型の機種も数多く発売されているが、いずれにせよパソコンが操作でき、ドライブがないと使えないのでは、いかに便利なソフトといえども大衆的なメディアとしては育たない。
 そこで登場してくるのが、CD-ROM専用のプレーヤで検索用のソフトやドライブが内蔵されている携帯用のプレーヤである。電子ブック(EB)と呼ばれるソフトは、その電子ビューアー専用のソフトのことである。
 検索の機能には、「前方一致検索」「後方一致検索」「条件検索」「複合検索」「メニュー検索」「グラフィック検索」「参照検索」などがあり、このアクセスの多機能性が、電子ソフトのおもしろさを特徴づけている。
 一般のCD-ROMが直径12cmのCDを利用するのに対して、電子ブック用のCDは、直径8cmのミニCDが用いられる。
 CD-ROMは、音楽用のCDが登場して以来、その物理フォマットや論理ファイルフォマットなどの標準的な規格提案がなされ、88年には、「ISO9660」という国際的な規格提案がなされる。国内では日本電子出版協会が「日本語対応CD-ROM標準フォーマット」を提案するなど標準化が進められましたが、アプリケーションのデータは汎用性に欠けるきらいがあった。
 一方、87年に開発された「CD-ROM版広辞苑」は、岩波書店、大日本印刷、富士通、ソニーの四社で共同開発された経緯があるが、その四社が日本語CD-ROMの統一フォーマットといえる「WING(ウィング)フォーマット」を開発する。いわば、WINGは、ISO9660の改良版で情報の検索や画面表示に必要なデータの形式を定めたものといえる。
 文字情報の電子フォーマットとしては、SGML(汎用標準マーク付言語)XMLが国際標準規格となっているが、各国の状況は必ずしも規格統一へ足並みがそろっているとは言い難い。
 ここへきて、PDF(ポータブル・ドキュメント・フォーマット)がにわかに注目され始め将来の標準化の流れを変えつつある。
 8cm CD-ROMを用いる電子ブックは、記憶容量で200MB、一般の英和辞書 6 冊分の文字量、5時間以上の音声が収録できる。CD-ROMの標準規格をベースに検索や操作の方法などの標準化を計り、電子ブック専用の標準規格を確立し、ハードとソフトの互換性を保証している。日本電子ブックコミッティには、出版社など103社が加盟し、10年間に亘り、「電子ブック」の普及の努力を積み重ねてきたが、2000年4月、その役割を終え解散した。今後は、各社、独自の事業展開がその普及の鍵を握ることになる。


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