マルチメディアと出版の近未来


1.7  サイバー(電脳)書店の登場

*サイバー(電脳)書店の登場
 アメリカでは、1995年に設立されたアマゾン・コムがわずか5年の間に7500人の従業員を抱える世界最大のサイバー書店に成長し、インターネット上に1900万アイテムもの多様な商品と110万点もの書籍を扱っており、99年度の売上げは26億ドルと急成長しているが、最近のニュースによると、在庫数の増大・買収コストの増大と激しいディスカウント商法により、累積赤字も5億ドルと急速に経営状況を悪化させていると伝えられており、「サイバー書店」の未来も必ずしもバラ色ばかりではないようである。
 アマゾン・コムでの書籍のオフ率は、ペーパー版で20%、ハード版で30%、ベストセラーもので40%となっている。近く、日本でも、和書部門に進出が噂されているが、日本では、「再販制」があり、ディスカウント商法によるサービス商戦ができず、二の足を踏んでいると伝えられる。
 日本では、95年に開設された広島の家電量販店デオデオ(旧社名ダイイチ)の洋書販売システムは、科学技術関連30万冊の洋書データベースを利用でき、ホームページを通じてオンラインショッピング(通信販売)している。アメリカの書籍販売会社SPI(スタンフォード・パブリケーションズ・インターナショナル)という会社と提携しており、在庫がある限り、二週間以内に注文品が届けられ、国内の通信販売だと一週間以内に読者に本が届けられるシステムが好評であるが、最近、書籍部門を縮小し、CDなどのAV商品にシフトしていると伝えられている。
 アマゾン・コムやダイイチのサイバー書店に刺激される形で、紀伊国屋書店、丸善、八重洲ブックセンター、三省堂などのサイバー書店が次々開設され、今では、中小の書店でも多くのシステムが開設されている。
 インターネットを利用したサイバー書店の売上げは、99年度の実績で70億程度と見られており、最大の紀伊国屋書店の「BookWeb」は、2000年3月で会員数135000人(月5000人程度増加)、月商1億7000万円程度(年商20億程度)の売上げで、活況を呈していると伝えられる。
 130万点、洋書200万件のデータベースを活用でき、書店在庫の書籍は、最短4日以内の配送、海外発注で10日〜4週間での入手となっている。宅配手数料は480円となっている。また、紀伊国屋では、この他に、店頭在庫の「ハイブッリド・サービス」(非会員制)なども運用しており、世界のオンライン書店なかでも、最も大きな売上げを確保している。
 丸善インターネットショッピングのシステムは、和書140万点、洋書135万点のデータベースが利用でき、入会金は、無料、宅配手数料は、380円とのこと。
  八重洲ブックセンターは、図書館流通センターの新刊データベースと 書協データベース「Books」が利用でき、八重洲本店の40万点、150万冊の在庫を中心に客注に応じている。また、このサイトでは、インターネットカタログショッピングとして人気の「楽天市場」の電子モールにもアクセスできる。
 同様なサーバー書店としては、三省堂書店「インターネットショピング」の他、友隣堂、平安堂、旭屋書店、ジュンク堂など多くの書店で実施されており、ブッククラブ「本屋さん」などのサイバー書店も活躍している。
 これらの書店在庫型のサイバー書店とは、別に1986年から、FAXとハガキによる客注の受注を開始し、宅配便ルートの先鞭を開いた版元・取次集配型のクロネコヤマトの「ブックサービス」も年商34億円と好調を伝えられており、そのうち、客注品の30%がインターネットを利用した注文とのことである。
 また、「再販制」との関連で、問題視されてきた「ポイント制」を 文教堂の「J-Book」や阪急電鉄の「ブックファースト」が実施し、また、公正取引委員会が「ポイント制」導入を歓迎する「報告書」を公表したこともあり、にわかに「ポイント制」が「サービスなのか」、事実上の「値幅再販」なのか注目されている。


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