マルチメディアと出版の近未来


1.1  インターネットの生い立ち

*インターネットの衝撃
 メディア環境をめぐるこの数年間での一番大きな変化は、1995年以降のインターネットの急速な普及とWindows95の登場だといえる。
 アメリカの調査機関NUAによると、インターネットの利用者数は、全世界で一九九九年六月現在、1億7900万人を超え、巨大なネットワークとして急速に日々拡大しているメディアである。ユーザー人口は、アメリカ・カナダ圏が1億203万人、ヨーロッパ圏が4269万人、アサア・パシフィック圏が2697万人、ラテンアメリカ圏が529万人、中東圏が88万人などとなっており、発展した資本主義国にその利用者が偏在しているといえる。
 今、その「情報革命」の発展の度合いが、新たな「経済格差」の要因となっていることに留意する必要がある。

*インターネットの生い立ち
 インターネットの生い立ちは、アメリカの軍事目的のために1964年に考え出された ARPAnet(アーパーネット)と呼ばれるネットワークである。
 ある基地が攻撃を受けたとすると、通信回線が一つだと、もうそこにある情報を回復することが不可能であるが、一つのホストコンピュータが必ず二つ以上のホストコンピュータとリゾーム型(いもづる型)に接続されていると、一つの回線が切れても、他の回線により、そのデータベースが利用できるようなシステムが考え出された。
 その後、そのシステムが全米科学財団によって学術用のネットワークとして開放され、学術研究のネットワークとして、全世界へ広がっていった。
 90年代に入り、その優れたシステムを商用にも開放しようという気運が高まり、爆発的な発展を遂げ、いまでは世界中に広がるネットワークとなったわけであるが、この発展の仕方には、“自由に行わせて、自然に淘汰する”というアメリカのオープンネットワークの思想がよく表れており、アメリカは、そのことで、世界の「情報覇権」を手中に収めたとさえいえる。


©1998年/2000年 Shimomura