ようこそ出版メディアパルへ


◎ 今月のプログラム

韓国/圓光大学・新聞放送学科講演記録

日本におけるインターネットの利用状況

出版メディアパル編集長 下村昭夫

ユビキタス社会を目指すためU-Japan計画

 「いつでも、どこでも、だれでも」が高度な情報システムが使うことができるユビキタス社会を目指すためU-Japan計画が進行中である。
ユビキタス社会の基盤となるインターネットは、ブロードバンド化とモバイル化がよりいっそう進み、利用者数の伸びと高い世帯普及率を示している。
韓国でも「U-KOREA戦略」が推進されており、韓国は、日本以上の「IT技術」の先進国である。
 また、マスメディアとインターネットの融合の時代を迎えており、その影響は大きい。また、双方方向性を持つインターネットは、情報の受け手であると同時に情報の送り手でもある点で、既存のメスメディアと大きく性格が異なっている。
 安価な定額料金システムの普及とブロードバンド化により、音楽・テレビ・動画などの大容量のサービスが可能になり、インターネットは多様なサービスで他のマスメディアとの競合している。また、ゲームやインターネット出版などWeb上のコンテンツの利用も拡大してきている。しかし、インターネットで提供される情報は無料が多く、課金システムの問題や急増するネット犯罪など社会的問題点も多い。

1.日本におけるインターネットの状況
 それでは、日本におけるインターネットの状況を主として、総務省の「2006年版情報通信白書」の要約をお話します。

2.インターネット利用者数及び人口普及率の動向
 2005年のインターネットの世帯利用人口普及率は66.8%、インターネットの利用人口はおよそ8,529万人(対前年581万人増)と推定される。
インターネットへ接続するための端末の利用状況については、パソコンと携帯電話等の両端末を利用する層が最も多く、推計で4,862万人(57.0%)となっています。一方、携帯電話等のみを利用している層は1,921万人(22.5%)、パソコンのみを利用している層は1,585万人(18.6%)となっている。

3.情報通信機器の世帯普及率
 2005年度末の情報通信機器の世帯普及率は、携帯電話が85.3%、パソコンが68.3%、DVDプレーヤー・レコーダーが61.1%、ビデオカメラが40.2%となっている。

4.個人・家計のインターネット利用状況
 2005年1月の一人当たりのインターネットの利用時間(日間)は34分7秒、一人当たり65.5ページビュー、一人当たりの利用頻度(月間)は28回となっている。
 端末別のインターネットの利用頻度を見ると、パソコンからのインターネット利用者のうち、「毎日少なくとも1回は利用」する層は43.9%、「週に少なくとも1回は利用」する層が28.5%、両者を加えると、全体の約7割(72.4%)が週に1回以上、パソコンでインターネットを利用していることになる。
 一方、携帯電話からのインターネット利用者のうち、「毎日少なくとも1回は利用」する層はパソコンからの利用者と比べ多く、55.3%と過半を超えている。これに「週に少なくとも1回は利用」する層は18.9%、両者を加えると、パソコンとほぼ同様に約7割(74.2%)が週1回以上、携帯電話でインターネットを利用していることになる。

5.インターネット利用端末別の利用人口推移
 利用人口については、携帯電話等の移動端末による利用者が、2004年末から1,098万人増加(18.8%増)した結果、推計6,923万人となり、パソコンによる利用者数6,601万人を逆転した。

6.進むモバイル化=携帯インターネット利用状況
 インターネットの進化におけるもう一方の軸はモバイル化であり、現在、モバイル化をけん引しているのは携帯電話である。2005年末の携帯電話等によるインターネット利用率は57.0%に達しており(対前年比6.9ポイント増)、2人に1人以上が携帯電話等を通じてインターネットへの接続を行っている。

7.モバイルコンテンツ産業の市場規模
 モバイル化の進展は、モバイルコンテンツ産業の市場の拡大という傾向にも現れている。モバイルコンテンツ市場とモバイルコマース市場からなる我が国のモバイルコンテンツ産業の市場規模は2005年に7,224億円(対前年比39.0%増)となり、市場別には、モバイルコンテンツ市場で3,150億円(同21.0%増)、モバイルコマース市場で4,074億円(同57.1%増)となっている。

8.携帯電話・PHSの利用機能
 携帯電話で現在利用されている機能と今後利用意向がある機能を比較すると、本来の電話が持つ機能(コミュニケーション機能)とは異なる「音楽再生」機能や「電子マネー」機能等への期待が高いことがわかる。

9.携帯電話とPHSの月額平均利用料金
 携帯電話及びPHSの利用料金の内訳を見ると、パケット料金の支払額が通話料金の支払額を上回っている。特に年齢別では10代、性別では女性に顕著となっている。

10. 消費者発信型メディア
 インターネットの新たなコミュニケーションツールとして、ブログとコミュニティ型インターネットサービスSNS(Social Networking Service)が注目されている。
 ブログとSNS(会員制ブログ)に共通する特質は、専門的な知識がなくとも個人が容易に情報発信することができる点にあり、「消費者発信型メディア」(CGM:Consumer Generated Media)と呼ばれる。
 ウェブブラウザやポータルサイトがインターネット利用者数の増加に貢献したのに対して、ブログやSNSは、閲覧専門であった多数の利用者が情報発信者となることを容易にし、インターネットに対する情報供給の増大に貢献している。このような情報供給主体のすそ野が広がるにつれて、インターネットのデータベースとしての価値を飛躍的に高めているのである。2006年3月末現在、ブログ登録者数は868万人、SNS登録者数は716万人となっている。

11. 社会的ネットワーク(企業ブログ)の価値
 SNSとは、友人知人等の社会的ネットワークをオンラインで提供することを目的とするコミュニティ型のインターネットサービスである。2003年3月に米国で開始されたFriendsterが世界で初めてのSNSと言われており、日本では2004年にGREE、mixi等が開始された。
 SNSの特徴としては[1]会員制、[2]登録者の非匿名性、[3]各種コミュニケーションツールの充実、の3点がある。
 SNSでは、信頼性を確保するため、既存利用者からの紹介がないと登録できない仕組みを採用していることが多い。このため、クローズドなコミュニティとして、会員間に高い信頼性が保たれている。また、実名を公表する人も多く、掲示板等で散見される誹謗中傷等の行為はあまり見られない。多くのSNSでは、ブログ等のツールが利用可能となっており、「会員制のブログ」と呼ばれることもある。
 一方、企業側から見ると、SNSの利用者の登録・公開情報を利用し、利用者の趣味やニーズに応じた広告を表示するなど、マーケティング戦略上の利点があると考えられる。

12.2006年日本の広告費[億円]
 2005年の「日本の広告費」(電通調べ)によると、日本の総広告費は5兆9625億円で、その内わけは、テレビが2兆411億円、新聞が1兆377億円、雑誌が3945億円、インターネットが2808億円、ラジオが1778億円、その他SP広告費(DM、折込み、屋外、交通、POP、電話帳、展示、映像など)、衛星(BS、CS)、CATV、インターネットなどが2兆306億円となっている。


13.急増するインターネット広告
 広告は企業活動と連動しており、その製品・サービス・アイデアなどの情報伝達が消費者動向を直接左右する。
テレビ・新聞・雑誌・ラジオのマスメディア四媒体の利用形態は変わらないが、インターネット広告が、2004年にラジオの広告費を上回り、第4位となった。


14.一般消費者向け(B2C)の電子商取引の市場規模
 2004年の一般消費者向け(B2C)の電子商取引の市場規模は、5.6兆円(対前年比27.6%増)、電子商取引化率は全体で2.1%と推定されている。
 一般消費者向け(B2C)の電子商取引では、電子商取引化率は、「パソコン及び関連製品」(16.6%)、「金融(銀行・証券等)」(16.8%)等が高く、市場規模の伸び率は「書籍・音楽」(対前年比50.0%増)、「金融」(同49.3%増)、「医薬・化粧品・健康食品」(同44.2%増)、「家電」(同41.7%増)、「各種サービス」(同41.2%増)、「旅行」(同39.5%増)、「食品・飲料」(同36.5%増)、「趣味・雑貨・家具・その他」(同32.6%増)、「エンタテインメント」(同27.6%増)等が高くなっている。
 一方、モバイル機器(ブラウザ内蔵型携帯電話、通信機器接続可能カーナビ、通信機器接続可能PDA等)によるモバイルコマースの市場規模は9,710億円であり、一般消費者向け(B2C)の電子商取引全体の市場規模の17.2%を占めている。モバイル化率は、「エンタテインメント」(49.4%)、「各種サービス」(45.5%)、「書籍・音楽」(34.8%)等が高くなっている。

*     *     *

 最後に、インターネットを通じて生まれた一冊の歴史教材をご紹介します。日本・中国・韓国=共同編集『未来をひらく歴史―東アジア3国の近現代史』という本です。日本の版元は、高文研という6人で運営されている小さな出版社です。
 この本は、インターネットでそれぞれの国の「原稿」が送られ、メーリングリストにより、直ちに各国の編集委員により、翻訳・検討され、発行されました。
 そして、この本は、「歴史認識が違っていても、歴史事実は共有できる」との視点で、さまざまな意見の違いを乗り越え、お互いの歴史観を共有した画期的な教材である。
 お互いに「学びあう」ことで、皆さん方との友情の輪が広がることを願っています。

このページの著作権はすべて出版メディアパル編集長 下村昭夫が保持しています。
© Shimomura Teruo