本作りこれだけはQ&A 出版技術講座


3.4  日本の出版流通の現状

Q:日本の出版流通は委託制と再販制から成り立っていると教わりましたが、委託制とは、どんな制度ですか?
A:委託制とは、出版社が取次を通じて書店に出版物の販売を返品条件付で委託する販売方法をいい、次のような方法があります。
新刊委託(普通委託);取次→小売間;105日(3ヵ月半)、取次→出版社間;6ヵ月
雑誌委託;取次→小売間;月刊誌;60日(→出版社90日)、週刊誌;45日(→出版社60日)
常備寄託:通常一年間は店頭展示されることを条件に出荷する特定銘柄(補充義務、社外在庫)
長期委託:通常6ヵ月程度の普通委託より期間の長い委託品(補充義務なし、イベント商品)
買切制(注文制):小売書店からの注文による送品(返品なし→返品条件付買い切り、延勘あり)
予約制:全集や百科事典など長期にわたる高額商品の予約販売(買い切り、返品なし)
流通マージン:取次;8%、書店;20%前後
Q:再販制の良し悪しが論じられていますが、その意味合いをお教えください?
A:再販制とは、定価販売(出版社が決めた価格で販売)すること義務つけた制度(→独禁法24条の2)のことを言い、次のような歴史的経過を持っています。
再販売価格維持:Resale price maintenanceの訳語(独禁法;1953年の改正、適用除外)
指定再販と法定再販(第四項):著作物;書籍、雑誌、新聞、レコード、音楽用テープ、CD
定価販売の歴史:東京書籍商組合、東京雑誌販売業組合「定価販売」の気運:1919年「定価販売決議」
1915年、岩波書店;「本店の出版物はすべて定価販売御実行被下度候」(奥付け)
1978年:第一次行政指導;橋口委員会「再販制廃止の動き」→「大量生産・大量販売」「返品量」
1979年:第二次行政指導;「新再販制」への移行(1980年10月)
包括再販から部分再販へ:出版社の意思で再販契約を選択できる(→再販、非再販の選択)
永久再販から時限再販へ:出版社の意思で「定価」表示を抹消、取次に通知(→非再販へ移行)
共同実施から単独実施へ:「再販売価格維持契約励行委員会」→「再販売価格契約委員会」
義務再販から任意再販へ:法律による「定価販売」の義務付けでなく、任意の再販制度へ
1989年:消費税導入;内税か外税かで大混乱;「内税」採用の大失敗;(1997年→消費税5%)
1991年「政府の規制等と競争政策に関する研究会」;「鶴田研究会」報告書
指定再販の全廃と法定再販の「適用除外見直し」;レコード、音楽用テープ、CDの見直し
1997年:例外なき「規制緩和」;アメリカの圧力→行政改革委員会→規制緩和小委員会報告
再販制の弊害:「取引条件の固定化」「客注品が遅い」「返品による無駄が多い」「競争原理がない」
再販制の擁護:「全国一律の定価」「安価な出版文化の共有」「中小出版社の倒産」「文化の衰退」
1998年3月:「著作物の再販制の取扱について」;「弾力運用」→自主的努力を促す見解
1998年12月:「平成13年春に制度の存廃に結論を得る」;当面維持の見解→原則廃止
1999年12月:「著作物再販制度下における関係業界の流通・取引慣行改善等の取組状況」
「出版社や書店などにおける非再販品の取り扱いの拡大等」自主的な弾力運用の評価
インターネットなどを利用した通信販売や直販ルートによる流通の多様化を評価 * 流通改善
ポイント制などによる読者サービスの奨励(事実上の値幅再販)→(景品規約:割引かサ−ビスか)


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