本作りこれだけはQ&A 出版技術講座


1.6  装丁の基礎知識 1

Q:よい装丁とは、また、装丁の依頼時の留意点についてお教え下さい。
A:装丁は、「書物の着物であり、衣装をつけ、化粧を施す術である」(税所篤一氏)と言われています。本の内容にふさわしい装丁が何よりも求められているといえます。
 第一に、平積みされる場合を考えて、平のデザインが調和している事が大切です。
 第二に、日本では、書店での陳列方法が棚差しが多いため、背のデザインが調和している事も大切です。
 第三に、読者が本を手に取って見た場合、平と背のデザイン全体が調和している事が大切です。
Q:本の用語で、カバー=jacket、表紙=coverとなっていますが、coverがカバーでは?
A:英語のcoverは表紙のことです。日本でいうカバーは、英語では、jacket、book jacket、Dust cover、wrapperなどと表記されます。
Q:恩知孝四郎とは、どんな人ですか?
A:武者小路実篤らと白樺派を興し、自ら、雑誌「白樺」の題字を書いた版画家。晩年、本のデザインに専念し、博報堂の装丁相談室長として、本のデザインの向上に情熱を傾けた人(1891〜1955年)。「本の美術」「草虫旅」などの著書があります。
Q:モリスの法則とは、何のことですか? また、モリスはどんな人ですか?
A:イギリスの詩人・工芸美術家のWilliam Morris(1834〜1896年)のこと。本の造本にも造詣が深く、豪華な私家本を多く残しています。モリスの法則とは、版面と余白に関するもので、のどのマージンを1とすれば、天1.2、小口1.44、罫下1.73の比率のもの。
一般に、日本では、版面は、特に指定しない限り、天地左右中央に配置します。
Q:帯の効用について、お教え下さい。
A:出版事典には、「その用途は主として広告宣伝のためであって、多くは目立つように色紙を用い、内容の紹介、著名人による推薦のことばといったものを記載する」とあります。日本では、本の装丁上、無くてはならない要素の一つです。
また、書店などでは、その本の陳列法を定める重要な情報源として用いられています。帯のキャッチフレーズを考えるのも、編集者の重要な仕事の一つでもあります。
Q:美術品や絵画の版権許可の責任は、また、そのアレンジは自由にできるのですか?
A:版権という用語は、現在の著作権法ではありません。お尋ねの主旨は、美術品や絵画の著作権(複製権)の許可をとるということでしょう。
ケースケースでいろいろですが、装丁家もしくは出版社(編集者)のいずれかが、著作権者に、使用許可の手続きをとることになります。著作者人格権の一つに、同一性保持権があり、著作権者の許可なく、トリミングやアレンジは出来ません。
なお、著作権の切れているもの、著作権のないもの、たとえば、中世の文字などはアレンジし、自由に使用することができます。
Q:装丁のイメージを伝えるよい方法は?
A:原寸大のラフスケッチは、難しいものです。1/4ていどの大きさの用紙を使いて、サムネールスケッチを描くことをお勧めします。


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