渦(出版界の内と外)


4.7  PL法と出版社の責任

花 子PL法という法律があるわね。本や雑誌とどんな関係があるの?
太 郎PL法の正式な名称は、「製造物責任法」といってね。一九九五年(平成七年)の七月に施行された法律で、「製造物の欠陥により人の生命、身体または財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与する」と定められている。
花 子難しそうだけど、具体的にはどう規定されるの?
太 郎本や雑誌は、PL法でいう「製造物」に相当し、もし、「製本が悪く、平とじのホッチキスの針金によるけがが生じた場合」や「インキの定着性が著しく悪く、衣服を汚損した場合」など、通常の使用状態で「一定の品質を備えた商品」であれば、「起こりえない事故」の場合は、出版社または印刷所の「安全性」に対する製造責任が問われることになる。最近では、雑誌の付録などに「紙以外の材質」が使われるケースや「化粧品やシャンプ」の見本の添付も容認されているから、細心の注意が必要といえるね。
花 子記事の中身による問題はないの?
太 郎PL法自体は、「有体物」による被害を想定しているので、本の記述や雑誌の記事自体は、「情報」であり、「無体物」と認識されているので、PL法による直接的な責任は問われないが、民法七〇九条による「過失責任」は問われることがある。
花 子たとえば、どんなことなの?
太 郎ある料理のマニュアル書に従い「電子レンジでゆで卵を作ろうとしてけがをした」として、「そのマニュアル書に誤りがあったとされた場合」には、「治療費その他の賠償」を問われることがある。
花 子読者の理解不足が要因になることもあるわね。
太 郎本や雑誌の場合、主な情報の発信者は「著者」であり、もちろん、読者は、その情報の受取人として、「それをどのように理解し、行動するにかは、読者の自由意志に基づく行為」と判断されるので、直接「出版社の過失責任」が問われることは、希なケースであるとはいえ、心して「編集」に当たりたいと思うね。
花 子ホントね。安心して読者の皆さんに本や雑誌に親しんでいただくためには、責任を持った「本づくり」が必要なのね。


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