渦(出版界の内と外)


3.7  マルチメディアの産業規模

花 子マルチメディアの話題が多いけど、産業規模はどれくらいなの?
太 郎『マルチメディア白書』(マルチメディアソフトウェア振興協会編)の99年版によると、1998年度のマルチメディアの産業規模は、全体で7兆1359億に達するものとみられている。
ハードウエア関連3兆3395億円、パケージ型ソフト1兆3030億円、ネットワーク型ソフト2498億円、サービス関連2兆2446億円となっており、うち、CD-ROM関連は、335400タイトルで、ゲーム4504億円、アダルト130億円、映画・音楽168億円、リファレンス269億円、教育・教養娯楽215億円、ナビゲーション47億円、カラオケ80億円などとなっている。
花 子出版界の2.5倍くらいね。そのうち、出版関連はどれくらいなの?
太 郎出版関連の1999年度の統計は、「10. マルチメディアと出版」の項目をお読みいただくとして、出版科学研究所の資料によると97年に刊行された書籍扱いのCD-ROM商品は、単体型で406点、書籍一体型で643点となっており、平均定価3279円、市場規模で100億円程度となっている。ソフトのジャンルは、その大半が、パソコン関連のソフトであり、書籍扱いのCD-ROMで図鑑、事典・辞典類はわずかに33点にすぎない。
花 子電子ブックの方はどうなの?
太 郎出版科学研究所のデータにも、電子ブックだけのデータは発表されていない。電子ブックの販売価格は2800円〜30000円と幅があり、平均価格で7000円程度であるが、このところ、低価格ソフトへニーズが移行している。最もヒットしたのは、『電子広辞苑』(岩波書店)で、続いて、『大辞林』(三省堂)、『現代用語の基礎知識』(自由国民社)などで、電子ブックソフトの販売累計は、100万枚を超えているが、97年の実績で市場規模は、53億円程度と推定されている。
花 子華やかな話題の割には、電子メディアの実状は大変なのね。
太 郎電子メディアの産業的基盤はまだまだ未確立といえ、その発展はハードシステムの普及、ソフトの開発に左右される。電子ブックが230タイトルを超えたといっても、出版物全体の新刊点数約60000点、流通している書籍数40万点と比較すれば、2兆5415億円の中の一部分でしかない。この程度の出版では、出版文化全体の中で、“電子ブック”でなければというような魅力も生まれてはこない。しかし、書籍にはない利点も多いわけだから、“本の世界”を補完するような形で電子メディアは成長してくると思える。


©1999年 Shimomura