渦(出版界の内と外)


3.3  出版流通と再販制度

花 子日本の出版流通の現状は、どんなふうになっているの?
太 郎日本の出版流通はとても複雑でね。基本的には、「取次 ― 書店ルート」を通して読者に本が届られるんだけど、出版科学研究所からは、取次を通った出版物の販売実績のデータしか「出版月報」には発表されていないんだよ。その他のルートの流通データは、公式には、公表されていないことになる。
花 子あら、そうしたら出版流通の実像はなかなかわからないのね。
太 郎毎年、「新文化」紙などを通じて発表される(株)安藤陽一氏の分析データが唯一のデータということになるが、1998年度の実績で、「書店ルート65.7%、教科書ルート0.8%、CVSルート19.0%、図書館ルート2.4%、輸出入ルート0.8%、生協ルート2.3%、スタンドルート1.1%、卸売ルート9.1%、鉄道弘済会ルート1.8%」などとなっているね。
花 子色々なルートがあって、出版流通が成り立っているのね?
太 郎出版販売ルートは、ますます多様化してゆく傾向にあるが、委託制と再販制で成り立っている出版流通の大動脈の中心をなすのが、取次・書店ルートであることには変わらないといえるね。
花 子日本の出版流通は委託制で書店さんに本の販売をお願いしているのと「定価販売」というと再販制で成り立っているのね。出版界が再販制の維持を訴えている意義はどんなことなの?
太 郎再販制度(再販売価格維持制度)とは、メーカーである出版社が、末端価格である再販売価格(定価)を決め、再販契約を結んで、取次や書店などの販売先で再販売価格を維持するための制度のことだよ。一般に自由主義(資本主義)経済の下では、商品の取引は、自由であることが原則で、メーカー側が定価販売を義務づけることができないが、本や新聞などは「文化的価値を社会的に平等に享受できる」ようにとの配慮から、独占禁止法の適用が除外(独禁法第23条)されている数少ない商品の一つとなっているのだよ。
花 子再販制度がなくなるとどうなるの?
太 郎公正取引委員会の主張は、「再販制を外すことのより、自由競争の下で、本の定価が安くなり、消費者の利益になる」とのことだが、出版界は、日本の出版産業の状況からすれば、再販制がなくなることにより、「出版社や書店の倒産が増加する」「初版部数の減少から、本の定価は上昇する」「出版点数が激減し、豊かな文化財が供給できなくなる」「必要な本が書店に並ばなくなる」など、かえって、読者(消費者)の不利益につながると、再販制の擁護を広く国民に訴えているのだよ。


©1999年/2001年8月 Shimomura