渦(出版界の内と外)


3.1  2000年度の出版産業の動向

花 子2000年度の出版界の売り上げは、4年続きのマイナス成長となったわね。
太 郎出版科学研究所がまとめた取次を経由した2000年の「出版物販売動向」によると、取次出荷金額から返品金額を差し引いた推定販売金額は、本体価格ベースで、2兆3966億で、対前年比で2.6%の減少となっており、97年度(0.7%減)、98年(3.6%減)、99年(3.2%減)と、4年連続の減少となり、出版状況は一段と厳しい状況となっている。

◎ 「出版月報/2001年1月号」(出版科学研究所)のデータをExcelで描いたもの(データの詳細
(図をクリックすると、拡大して見られます)
花 子消費税の引き上げが響き、97年が“戦後初の減少”だったわね。その後も日本経済全体が冷え込んでいるということね。
太 郎97年4月の消費税の引き上げを契機に、個人消費の低迷が続き、出版物の販売も低調が続き、若者たちの間で、インターネットや携帯電話が急速に増加したことによる通信費の増大やライフスタイルの変化が結果として、本や雑誌の販売に大きく影響していると見られている。
 また、新古書店の急増やマンガ喫茶などの影響も無視できないほど大きくなり、、戦後最大の不況の中で、”不況”に強いと言われてきた出版界も例外ではなく、厳しい状況から脱出できないでいるね。
花 子書籍と雑誌の個別の状況はどうなの?
太 郎販売実績の内訳は、書籍が対前年比で2.3%減の9706億円で4年連続の減少、雑誌が同2.8%減で1兆4260億円で3年続きで対前年比での減少となっている。
花 子販売部の人が、送品規制でたいへんだと言っていたけど?
太 郎売上不振と返品率対策として、送品実績で、書籍が3.1%減、雑誌が3.7減となったが、残念ながら、書籍の返品率は0.5%減の39.4%と依然と40%近い高水準となり、雑誌の返品率のほうは0.7%減の28.9%わずかながら改善された。「送品を絞れば返品率は下がる」というセオリーは必ずしも効果的に返品率には反映していないのが現状である。
花 子先行きが見えない厳しい状況がまだ続くのね。
太 郎新刊発行点数は3.8%増の67522点、雑誌の新刊点数が209点と4年ぶりに増加、書籍も雑誌も販売効率が低下に伴い、販売効率が低下しているが、出版物の刊行意欲は衰えていないといえる。
 こんな時代だからこそ、一人一人の編集者が、時代に流されることなく、それぞれの「出版の原点」に立ち返り、読者の文化的要望と期待に応える出版活動を地道に歩むことが大切だね。


補足資料(図表データの詳細)

書 籍構成比雑 誌構成比総 計
898,48441.611,91658.420,400
908,66040.712,63859.321,298
919,44441.413,34158.622,785
929,63740.913,92359.123,560
9310,03440.314,86659.724,900
9410,37640.815,05059.225,426
9510,47040.415,42759.625,897
9610,93141.115,63358.926,564
9710,73040.715,64459.326,374
9810,10039.715,31560.325,415
999,93540.314,67159.724,606
20009,70540.414,26059.623,965


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