渦(出版界の内と外)


2.7  電子文庫パブリの発足

花 子この春、アメリカのインターネットのサイトから、二日間で五〇万部もの大ベストセラーが生まれて話題を呼んだわね。
太 郎スティーブン・キング氏のライディング・ザ・ブレットという小説で、ダウンロードする費用が二ドル五〇セントということもあり、あっという間に世界中の話題を集め、インターネットの書籍販売の新しい可能性を見せてくれた作品といえるね。
花 子日本語版は、出版されているの?
太 郎六月にオープンしたサイバー書店の一つのBOLが独占先行販売しており、この販売方法も話題になっているね。
花 子日本での「電子書籍」の販売は、頓挫したとのことだったわね。
太 郎実験から商業開始ができなかったのは、「電子書籍コンソーシアム」が進めていた電子書籍のことで、日本でもフジオンライン系の「電子パピレス」やボランティア団体が運営する電子図書館「青空文庫」などは活躍しているね。
花 子四月の国際ブックフエアで話題になっていた光文社などの「電子文庫」はどうなったの?
太 郎大手出版社八社が参加した電子文庫出版社会が運営する電子本販売サイト「電子文庫パブリ」という形で九月一日正式に発足し、一〇〇〇タイトルほどの絶版本を中心とする「電子本」が五〇〇円から八〇〇円ほどの価格で提供されている。
花 子「電子文庫パブリ」を利用するには、どうすればいいの?
太 郎無料の会員制を取っており、会員登録すると各社の電子本をダウンロードするためのソフトや外字を提供するためのCD-ROMが送られてくる。
花 子各社の電子本のファイル形式は統一されているの?
太 郎電子本のフォーマットは各社が独自に決定しており、テキスト形式(講談社、徳間書店)、ドットブック形式(講談社、集英社、角川書店、新潮社)、PDF形式(中央公論新社)、独自形式(文藝春秋社)と今後の発展に課題を残す一つになっている。このうち、角川と新潮社は、自社サイトでPOD版(プリント・オンデマンド)サービスも提供する。
花 子課金システムは、どうなっているの?
太 郎音楽配信を手掛けているミュージック・シーオー・ジェーピーが担当しており、クレッジト決済を使った共同購入システムを採用している。
花 子著作権のことが気になるわね。
太 郎著作権の保護については、加入規約で「電子書籍の利用権のみを販売」と明記し、購入しても著作権は当然、「移行」しないこととしている。


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