渦(出版界の内と外)


2.5  印刷のデジタル革命

花 子印刷の技術で、CTPという用語が盛んに出てきたんだけど、どんなことかしら?
太 郎プリプレス(印刷前工程)の技術革新については、コンピュータ利用の普及など、さまざまなデジタル化が進んでいることは、花子さんも良くご存知のことだね。
CTPはプレス段階(印刷工程)のデジタル化のことだけど、二つの意味があるんだよ。その一つは、Computer to plateの略で、製版工程のデジタル化のことだよ。
花 子直訳すると、コンピュータから刷版へということかしら? オフセット印刷の基本は、版下を作り、製版カメラで撮影し、さまざまな加工をして、印刷用のフィルムを完成させ、刷版に焼き付けて印刷するんでしょう。
太 郎その製版工程をなくして、コンピュータの中にある印刷情報をダイレクトに刷版に焼き付けてしまう方法だよ。
花 子あら、そうすると、印刷フィルムはなくなってしまうの?
太 郎そのとおりだよ。フィルムレスの推進により、コストダウンを図ろうということだよ。そのためには、文字や画像情報のデジタル化が前提になっていることは当然のことだけど、デジタルカラープルーフ(色校正のデジタル化)の利用や印刷機のインキキー開度の自動制御など、カラーマネジメントとプレス工程全体のデジタル化の推進が課題となるね。
花 子すごいのね。ところで、もう一つの意味はなんなの?
太 郎もう一つはね、Computer to pressの略で、ポストプレス(印刷後工程)のデジタル化のことだよ。
花 子今度は、直接、コンピュータから印刷してしまうというんじゃないでしょうね。
太 郎アタリ。いわば、デジタルオフセットともいえる方式で、オンデマンド印刷と言ってね。アメリカではかなり普及してきているね。
花 子オンデマンドって需要があった時という意味でしょう。少部数からでもカラー印刷が可能になると聞いたけど本当なの。
太 郎印刷機がカラーコピー機になったようなものだから、一部からでも必要な部数だけ、カラー印刷が可能になるんだよ。
花 子印刷の精度などに問題はないの?
太 郎解像度もかなりのものだよ。その他に、たとえば、カレンダの印刷をしながら、社名などの宛名だけを別名にしたり、カタログの中から必要な部分だけを印刷できるセレクティブバインティングなども出来るんだよ。
花 子いろんなことが可能になるのね。急速に普及するのかしら?
太 郎コスト高ということもあり、そう急速には普及しないだろうけど、紙媒体への印刷という視点だけではなく、マルチメディア化なども視点にいれた使いわけがポイントといえるね。アメリカの科学雑誌などでも、基本的には、オンラインによる情報提供に切り替え、紙への印刷はオンデマンド印刷でというケースもでてきているね。


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