渦(出版界の内と外)


2.2  DTP編集入門

花 子この頃、DTPで編集する本や雑誌が増えてきているけど、どんな風なの。
太 郎DTPとはデスク・トップ・パブリッシングのことだが、今まで、編集者が机の上で行っていた原稿の入稿整理、割付、校正などの編集に関する作業がすべてコンピュータのディスプレー上で行われることだよ。
花 子あら、そうしたら、私の使っているWindowsでもDTPが可能なわけ?
太 郎Windows系のコンピュータでもDTPに対応出来なくはないが、デザインや印刷の現場ではMac(マッキントッシュ)が主流だよ。
花 子なぜ、DTPではMacが主流なの。
太 郎DTPの歴史には、3A(トリプルA)と呼ばれるエピソードがあってね。1985年に、アメリカのアルダス社がページメーカーというDTP用のレイアウトソフトを開発、アドビ社がポストスクリプトタイプのページ記述言語を開発(後にアルダスはアドビに合併された)し、アップル社がそれをMac上で文字、図形も、動画も、音声も扱えるようにしたことからDTPが可能になったんだよ。
花 子生まれながら、DTPの思想をMacは持っていたわけね。
太 郎文字原稿がキーボードから入力でき、図版原稿はスキャナーで入力でき、フルページのレイアウトがディスプレー上で完成でき、その見たままの紙面がレーザプリンタで版下として得られることをWYSIWYG(ウィジィウィグ)と呼んでいるよ。しかも、その版下は写植と変わらない精度のものだよ
花 子大変ね、編集の基本ばかりでなく、これからは、パソコンのスキルもマスターしなければならないのね。
太 郎編集のコンピュータ化は避けて通れない課題だね。ところが、いざ、DTPを始めるとなると、一番大切な事は、本作りの基本が身についていないと、トラブルの連続という結果になる恐れがあるね。
花 子ほんとね、どんな時代になったとしても、本というメディアで何を読者に伝えるのかという事が大切なのね。
太 郎その通りだよ。情報という字は"情けに報いる"と言う意味なんだよ。コンピュータで本を作る事に意味があるのでなく、同時代を生きる人の心に響くメッセージを送り続ける事が出版の原点と言えるね。


©1998年 Shimomura