出版メディアパル(Murapal通信)


1.2  インターネットと出版の近未来

一.ITとデジタルコンテンツ
 二〇〇一年版の「インターネット白書」によると、日本におけるインターネットの人口が今年の二月の時点で、三二六三万人(対昨年比一六八・四%)となっており、この一年間に一三二五万人もの人が新たにインターネットを始めた発表されている。
 急増した要因はなんといっても、携帯電話とPHSの爆発的な普及による若い女性を中心としたインターネット人口の急増があげられる。女性の比率が、三八・三%を締め、昨年の二九・三%から大幅に伸びた。世帯浸透率でも四六・五%と昨年と比較するとほぼ倍増している。
 比率でみると、一〇代から三〇代の比率が大半だが、シルバー世代も昨年と比較すると、一・六%と伸び率では、二・七倍と急贈しているのが目立つ。
 自宅や勤務先・学校などで、ネットを楽しむライフワークが着実に増加したということだが、世界のインターネット人口を約二億八六〇〇万人として、アメリカが約一億人、ヨーロッパが七二五〇万人、アジア・太平洋地域が九一五〇万人、アジア圏における普及率でみると、第一位がオーストラリアで三八・三%、台湾、韓国、シンガポール、香港、ニュージランドと続き、日本は二三・四%で第六位となっており、IT立国を唱えながら、意外と、インターネットのインフラ作りで、遅れをとっている。
 中でも、韓国の急増が目立ち、「サイバーコリア21」では、「二〇〇三年までに全国民にインターネットを利用できる」環境作りを目指しており、その実現の可能性が高まっている。
 一方、日本でも、二〇〇〇年一一月に「IT基本法」が成立し、政府は、二〇〇一年一月に「e-Japan戦略」を発表した。その戦略で言う、「国民が情報通信技術を積極的に活用し、その恩恵を最大限に享受できる知識創造型社会に向けた指針」を実現するには、高速・広域のブローバンド回線など、インフラ作りの課題とともに、IT技術教育など多くの課題が山積しているといえる。
 また、二〇〇一年版の「デジタルコンテンツ白書」によると、デジタルコンテンツの産業状況は二〇〇一年の予測で、パッケージ型の出版系コンテンツ市場は七二七億円(対前年比一〇九・八%)。その内訳は、ナビゲーションで二八九億円(対前年比一一五・六%)、リファレンスで一七八億円(対前年比九八・九%)、教育・教養娯楽で二六〇億円程度(対前年比一一二・一%)となっている。
 ネットワーク型の出版系コンテンツ市場は二七六九億円(対前年比一一一・六%)、その内訳は、有料ニュースメールが二四億円(対前年比一〇九・一%)、電子書籍が四億円(対前年比二〇〇%)、オンラインデータベースが二六七九億円(対前年比一一一%)等と推定されている。
 出版社系のパッケージソフトの中心は、リファレンス系のCD-ROMが中心といえるが、百科事典のCD-ROM市場は、伸び悩んでいるとはいえ、手堅い市場となっており、とりわけ、教育系のCD-ROM市場は、二〇〇二年度の新学習要領改訂に伴う新規購入などが見込まれている。
 しかし、将来的には、百科事典などは、ネット事典の時代を迎えており、あらかじめコンピュータにバンドルされた商品以外は、CD-ROM市場も冷え込んできているとみられ、華やかさはない。代わりにiモードなどを使ったインターネット事典の市場が急増してきている。
 なお、オンラインデータベースの市場が、出版の市場からすると大きすぎると写るが、この白書の統計上、一般の商業データベースの市場がほとんどで、出版系といっても、テキスト系のデータベースと考えると誤解を招かないであろう。
 デジタルコンテンツには、速報性や検索性などの利点があるが、従来型の出版メディアには、捨てがたい便利さ、利用の簡便さがあり、一概にデジタルコンテンツに移行することが必然的要素とも思えない。当面は、共存共生の時代で、それぞれの特性を生かした活用の仕方が、望まれている。

二.eラーニングと教育革命
 先ほど紹介した「e-Japan戦略」とその基本計画の決定を受け、にわかに注目されてきたのが、インターネットを駆使した教育革命である。
 二〇〇〇年一一月の大学審議会の答申では、「インターネットを使った大学学部卒業資格の一二四単位中六〇単位まで認める」ことが答申され、二〇〇〇一年度から、実施されている。
また、通信制の大学では、いわゆるスクーリング(直接対面授業)なしに、「一二四単位全部をWeb教育で取得できる」ように答申されている。
 「eラーニング白書(2001/2002年版)」によると、eラーニング(e-Leaning)とは、「ネットワークによる遠隔教育」をいい、また、インターネットやイントラネットを利用したWebによる学習教育システム」のことをWBT(Web Based Training)というが、日本でも、インターネットを駆使したバーチャル・ユニバーシティが実現する法整備ができたことになる。
 このWBTの実現により、「双方向性を持ち、自由な時間に学習が可能」になり、「何時でも、何処でも、誰でも利用できる」ネットワークによる遠隔教育が、今、世界的規模で推進されている。
すでに、アメリカでは、四年制の公立大学の七〇%がeラーニングのよる遠隔教育を実施しており、MIT(マサチューセッツ工科大学)では、その教育カリキュラムをインターネット上に公開しているという。
大学審議会の答申によると、eラーニングの教育システムとしては、次のような要件を挙げている。
 「文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもの」「電子メールの交換などの情報通信技術を用いたり、オフィス・アワー等に直接対面したりすることによって、教員や補助職員(教員の指導の下で教育活動の補助を行うティーチング・アシスタントなど)が毎回の授業の実施にあたり、設問解答、添削指導、質疑応答等による指導を行うもの」「授業に関して学生が相互に意見を交換する機会が提供されているもの」などとなっている。
 さて、この新しい「教育・教材にどのように対応できるのか」が問われていることになるが、これは、システム的に高度な「ホームページ」作りといえ、「動画、ナレーション、静止画、画像、アニメーション」とまるで、「インターネットを使った教育映画」作りに譬えることができよう。合わせて、知的財産権(著作権)についても高度な知識が要求されることになる。
 eラーニングを含むデジタルコンテンツの将来を握るキーワードの一つが、広域・高速の「ブロードバンド」であるとすれば、もう一つのキーワードは「リッチコンテンツ」である。リッチコンテンツとは、単に「情報量が豊かである」というだけでなく、映像と音声を駆使した「高度な品質(価値)を持つ」コンテンツをさしている。

三.出版社とインターネット
 現在、出版社のうち、ホームページを開設しているのは、一五〇〇社程度とみられる(今井書店のホームページには、約二〇〇〇の出版関連のホームページへのリンクがある)。
 出版科学研究所の調査資料によると、一九九九年度に新刊書を発行した出版数は、三七〇〇社となっており、このうち、五点以上の新刊を発行した出版社数は、一五〇〇社となっているから、ホームページを開設している出版社総数とほぼ一致している。
 ホームページの内容としては、「書籍データベース、商品受注システム、自社案内、情報サービス、書店情報、リンク集」などとなっており、サービスの内容も「新刊情報、コラム、講演記録、ダウンロードサービス、プレゼントコーナー」など多種多様であるが、一部のWebサイトを除いて、今のところ、個々のホームページは魅力に乏しい、見応えのあるホームページつくりは、これからの課題といえる。
 インターネットを利用したサイバー書店の動向は、二〇〇〇年のリポートで詳細をお伝えしたが、紀伊国屋書店、八重洲ブックセンター、丸善、三省堂書店などの「書店在庫型」に加え、「eS-Books」「bk1」「BOL」などの「取次在庫型」あるいはブックサービスなどの「集配型」とサイバー書店のビジネスモデルが出揃い、一年経ったわけであるから、それぞれのネットビジネスの全貌を明らかにして欲しいところであるが、一部を除いて、その決算内容は、明らかにされていない。推定によると、ネット書店全体の売上げは、約一〇〇億円程度とのことである。
 出版科学研究所の調査資料によると、出版社独自のインターネット利用の通販受注を実施している出版社数は、六五〇社程度とみられる。このうち、一定額以上の購入に対して、送料サービスを実施している出版社もある。「s-book」や「BOOKS-ID.NET」のように小学館や文藝春秋社など大手の出版社を中心に共同の受注サイトを作る新しい動きも現れてきた。

四.デジタルコンテンツの動向
 テキスト形式の電子情報の配信としては、二〇〇〇年のリポートでも紹介した「電子書斎パピレス」や「青空文庫」が有名である。
 「電子書斎パピレス」は、一九九五に開設されたコンテンツのデジタル化とその配信を行うビジネスモデルの老舗といえ、現在九〇社あまりの出版社のコンテンツを提供しており、配信総数の六〇〇〇点を超える電子書籍の販売で、安定収入を上げている。
 「青空文庫」のほうは、ボランティアで運営する、いわば、「電子図書館」的存在である。コンテンツの提供は一〇〇〇点を超えている。両者とも、コンテンツの提供は、テキスト形式とPDF形式などで行っている。
 新しい動きとしては、「電子文庫パブリ」やイーブックイニシアティブジャッパンが配信を開始した「電子書籍e-book」などがある。
 「電子文庫パブリ」は、光文社など大手出版社八社が参加した電子文庫出版社会が運営する電子本販売サイト「電子文庫パブリ」という形で二〇〇〇年九月一日正式に発足し、一〇〇〇タイトルほどの絶版本を中心とする「電子本」が五〇〇円から八〇〇円ほどの価格で提供されている。(現在は二〇社程度が参入している)
 無料の会員制を取っており、会員登録すると各社の電子本をダウンロードするためのソフトや外字を提供するためのCD-ROMが送られてくる。
電子本のフォーマットは各社が独自に決定しており、テキスト形式(講談社、徳間書店)、ドットブック形式(講談社、集英社、角川書店、新潮社)、PDF形式(中央公論新社)、独自形式(文藝春秋社)と今後の発展に課題を残す一つになっている。このうち、角川と新潮社は、自社サイトでPOD版(プリント・オンデマンド)サービスも提供する。
 課金は、音楽配信を手掛けているミュージック・シーオー・ジェーピーが担当しており、クレッジト決済を使った共同購入システムを採用している。
著作権の保護については、加入規約で「電子書籍の利用権のみを販売」と明記し、購入しても著作権は当然、「移行」しないこととしている。
 イーブックののほうは、二〇〇〇年一〇月に立ち上げた「10daysbook」で、「あしたのジョー」「サイボーグ007」や「ドカベン」などのコミックを二〇〇円〜五〇〇円程度で程度しているが、このシステムは、「電子書斎コンソーシアム」が実験したインターネットを通じたブック・オン・デマンド構想を具体化したものといえる。コンテンツは、独自のスキャンデータを使うが、一冊あたりのデータが一五MBときわめて大きく、そのビュアーの普及の壁は厚く、ブロードバンド時代のメディアといえよう。
 辞典情報のネット配信としては、ソニーなどの電子ブック閲覧室「私の仕事部屋」や平凡社の百科事典情報を提供する日立S&Sの「ネットで百科@Home」「三省堂ウエブディクショナリー」などに加え、岩波書店の「広辞苑」などiモードを利用した情報サービスが急増している。
 iモードを利用したビジネスモデルもいろいろあるが、インターネット辞典の月額の利用料としては、一〇〇円程度となっており、若者の利用が急増しているといえる。その一〇〇円の配分の一例をあげると、出版社などコンテンツの提供会社が五〇円、回線業者が一五円、NTTドコモが三五円となっている。仮に、月一〇〇万人のアクセスのある、Web辞書があるとして、月五〇〇〇万円の売上げとなる。
 しかも、「紙媒体」の辞書と違い、一度システムが構築されると、「印刷」することもなく、「在庫」となることもない。仮りに、修正やバージョンアップがあったとしても、対応性に優れているとすれば、Web辞書への傾斜はとどまることはないともいえる。
 漫画の配信としては、富士ゼロックスの「まんがの国」や集英社の「imodeジャンプ」などがある。また、音声の配信としては、新潮社の「サウンドシェルフ」などがある。
 村上龍氏などの作家さんのWebサイトやソネットが運営するe-Novelsなどにも、人気作家宮部みゆき氏らのオリジナル作品が提供されている他、メールマガジンの「melmal!」とBOLジャッパンが運営する「文学メルマ!」なども文芸作家の作品が提供されている。
 「まぐまぐ」に代表される無料のメールマガジンは、二〇〇一年四月現在で、延べ八五〇〇〇誌(対昨年比三・三倍)が登録され、読者の単純総計は、四八〇〇万人(対昨年比一・五倍)を数えている。なお、これらの無料メールマガジンも広告媒体として、活発な動きをしている他、有料化への試みもあるが、有料に耐え得るコンテンツの内容が問われているのと、著作権保護など問題点も山積している。
 「デジタルコンテンツ白書」によると、有料ニュースメールの販売実績は二四億円、電子書籍の販売実績は約四億円と推定されている。
 なお、「デジタルコンテンツ白書」の前身である「マルチメディア白書」では、一九九七年までは、「電子ブックの市場を約三〇億円と推定していたが、九八年以降の分析データからは、「電子ブック」の項目がなくなった。以後、「電子ブック」の市場データは、関係団体から発表されていない。一九九〇年結成された電子ブックコミッティも二〇〇〇年四月に解散された。

五.知的財産権と著作物の概念
 著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されており、著作物の例示として「言語、音楽、舞踏・無言劇、美術、建築、地図、図形、映画、写真」などがあげられていた。これに一九八五年(昭和六〇年)の改正で「プログラム」が追加されたことから、元々 “表現物”を対象にしていた “著作物”の概念がどちらかといえば “発明やアイデア”などを保護してきた工業所有権法(特許法や実用新案法など)的性格も含むようになった。
 また、一九八八年の改正で、データベースも情報の “選択性 又は 配列性、検索性”などに独自の 創作性が認められれば、単なる編集著作物でなく、独自の“データベースの著作物”として保護されることになった。
 マルチメディアの著作物とは、「文字、音声、静止画、動画などの多様な表現形態の情報を統合した伝達媒体またはその利用手段で、単なる受動的な利用でなく使用者の自由意思で、情報の選択、加工、編集等ができる双方向性を備えたもの」(著作権審議会の答申案)と定義されており、コンピュータソフトやデータベースの著作権の延長線上にある“特異な著作物”として立案される方向性にある。

六.ゆらぎの時代の著作権
 一九九六年一二月、WIPO(世界知的所有権機関)では、著作権に関するベルヌ条約を補強する新条約を採択した。その新条約によると、「コンピュータプログラムやデータベースの著作権の保護」「著作物の頒布やレンタルに関する著作者の許諾権の承認」「写真の著作物の保護期間の拡大」「コピー機能解除装置の販売禁止」「著作権に関するデータベースの改ざんの禁止」などが採択された。
 この採択を受け、写真の著作権が「公表後五〇年」から「死後五〇年」(国際的には死後七〇年)へと改正された他、ネットワーク時代への対応を含んだ次のような「改正著作権法」が一九九八年一月から施行された。
 「ネットワークへの接続行為について、実演家及びレコード製作者に許諾権(著作隣接権)を認める」「著作物をネットワークに接続する行為を『送信』に含め、著作権が及ぶこととする」「同一のLAN(企業内情報通信網)内でのコンピュータプログラムの送信を『送信』の保護に含め、著作権が及ぶこととする」「無線によるインタラクティブ送信について新たな規定を設け、概念上、有線との区別は行わない」などとなっており、「公衆送信権並びに送信可能化権」という新しい概念が著作権法に規定された。
 その後、一九九九年一〇月改正では、プログラムのコピープロテクション解除装置の製造・販売を禁止することなどが決められた。
 また、デジタル化やネットワーク化の進展に伴い、著作権および著作隣接権の管理制度の整備の必要性から、「仲介業務法」が二〇〇〇年一一月に全面改正され、新しく「著作権等管理事業法」が、二〇〇一年一一月から施行される。  インターネットの普及とともに、ウェブサイトにアクセスするためのドメイン名の重要性が増してきている。WIPOなどの「ドメイン名と商標に関する紛争処理」の報告書などを受け、日本ネットワークインフォーメーションセンター(JPNIC)や工業所有権仲裁センターなどが、紛争の解決に当たってきたが、不正競争防止法が二〇〇一年に改正され、「第三者が他人の商標等と同一または類似のドメイン名を取得し、自らは使用せず、商標権者等に不当に高額で転売を図ったり、商標権者等の信用を傷つける等、その事業活動を妨害したり、する行為」に対し、差止請求権及び損害賠償請求権が認められることになった。
 また、デジタルコンテンツの取引に関する消費者保護のために「特定商取引法」が二〇〇〇年一一月に制定され、二〇〇一年六月から施行されている。
 このように著作物も著作権の概念も、ゆらぎの時代を迎えているといえるが、“ゆらぎの時代”だからこそ、著作権を中心とする知的財産権法や「ビジネスモデル特許」などの基本を充分に理解する必要があるといえる。

七.ビジネスモデル特許の行方
 二〇〇〇年のリポートでは、アマゾンコム・ドットのビジネスモデル特許を巡るアメリカのサイバー書店の熱い戦いをご紹介し、また日本でもインターナショナルサイエンティフィック社のビジネスモデル特許に伴う仮処分申請を紹介し、アメリカに続き、日本でも、「ビジネスモデル特許騒動」がいよいよ始まったとリポートした。
しかし、このビジネスモデル特許は、日本の特許法に明確な概念がなく、アメリカでは、アマゾン・コムの行過ぎた「規制」に対し、不買運動すら起こっており、二〇〇一年二月には、アメリカの裁判所は、ワンクリック特許に関して、その特許性を疑問視する判断がなされ、プライスライン社とマイクロソフト社の「逆オークション特許」紛争も急速な“和解”で幕を綴じた。
また、日本でのインターナショナルサイエンティフィック社の仮処分申請は、“特許実施の技術ではない”と、二〇〇〇年一二月に却下されている。
 なお、日本の特許庁は、二〇〇〇年一二月に「コンピュータ関連発明の審査基準」を公表し、発明の成立要件として、「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて、具体的に実現されていること」とし、混乱する「ビジネスモデル特許」に一定の方針を示した。
 著作権法では、「思想又は感情を創作的に表した表現物」が保護されるのに対し、特許法や実用新案法では「発明や考案」が保護されることと、著作権法の保護では、「公表された著作物」は保護の対象になるが、特許法では、一定の手続きを経て、特許庁に出願され,登録されたものだけが保護の対象になる点が大きな違いといえる。
 また、著作権法では、公表された著作物は、全て著作権法の対象になるが、特許法では、発明は、「自然法則を利用して高度な問題を解決した創作的な発明」となっており、創作的な思想で、しかも「新規性や進歩性」を兼ね備えたものでなければならない。
 ビジネスモデル特許も同じように、単に新しいビジネスを考えたという程度では、特許の対象ではなく、「コンピュータやインターネットなどのIT技術を駆使して新しいビジネスの方法を可能にしたソフトウエア関連の発明に対する特許」といえる。

八.デジタルコンテンツの課題
 デジタルコンテンツの利点としては、「複製が簡単である.大量の配信が出来る.更新情報がすぐに作れる。検索性に富む」などさまざまあるが、その反面、「見やすい電子ビューワーがない。著作権上の問題がある。安定した課金システムが開発されていない」などと問題点も多い。
 e-Bookの電子ビューワーとしては、「電子ブック」などに加え、マイクロソフトのe-Bookリーダーとアドビ・アクロバットによる電子書籍の閲覧ソフトが新たに登場してきたことになるが、そのメディアごとの仕様に左右され、汎用性のあるe-Book用の電子ビューワーになりえない。だとしたら、それらの電子ビューワーソフトは、インターネット上で、無料配布され、e-Bookの読書環境が整わない限り、新しいデジタルコンテンツの普及は、遠い夢に終わるといえよう。
 昨今では、「コンピュータウイルスや不正アクセス・不正コピー」さらには「Web攻撃やハイテク犯罪」が多発しており、社会問題となっており、犯罪・セキュリティを巡る課題も多い。
 インターネット配信を巡る著作権法の改正、ビジネスモデル特許を巡るアメリカの動き、不正競争防止法の改正など法律上の新しい考え方と、風営法の改正以来、増加している有害情報の取り締まりの強化や「個人情報保護基本法」や「青少年社会対策基本法」制定の動きなど、インターネットと「言論・表現の自由」を巡る課題にも留意したい。


©2001/2002年 Shimomura