出版メディアパル(Murapal通信)


毎日新聞メディア欄連載「出版ウォッチング」(11月号)

 2003年4月から「毎日新聞のメディア欄」(隔週の火曜日発行号)に「出版ウォッチング」を連載することになった。このページでは、4月以降に掲載された「出版ウォッチング」月ごとにご紹介することにする。
出版メディアパル編集長 下 村 昭 夫

 著者と読者の皆さんの架け橋として本を生み出している出版界の「こぼれ話」を月2回・隔週の火曜日の連載で、ご紹介することとなった。ここでは、11月掲載分をご紹介する。

(15)メディアミックスと出罪 (2003年11月11日号)
 版  大手取次の日販が、年内にニュービジネスとして、独自に映画の製作と配給事業に乗り出す。
 日販は、1991年から、アメリカ映画の「マネキン2」に出資しており、95年からは邦画にも力を入れてきたが、これまでの事業では、「映画ソフトの販売権」は取得していない。
 新ビジネス計画では、脚本から監督や出演者の交渉など、映画の企画から製作までを一貫して行い、DVDやビデオ、写真集の同時発売を企画するなど新しい形のメディアミックス戦略となる。
 出版社が、映画事業に参入してきたビジネスモデルには、角川書店や徳間書店が進めてきたメディアミックス路線がある。
 角川のメガ・ソフトウェア・パブリッシャー戦略とは、あらゆるメディアで提供可能なソフトの開発を意味しており、「書籍・文庫・雑誌・コミック・アニメ・映画・テレビゲーム・衛星放送」までを視野にいれた事業展開をしている。96年には、キングレコードやセガ・エンタープライズなどと共同で『新世紀エヴァンゲリオン旋風』を、97年には、渡辺淳一の『失楽園』を大ヒットさせている。
 一方、徳間も、97年に、空前の大ヒットともいえるスタジオジブリの宮崎駿監督の『もののけ姫』を成功させており、両社とも、意欲的なメディアミックス路線を推進している。
 昨年、話題になった宮部みゆきの『模倣犯』(小学館)や洋画では「ロード・オブ・ザ・リング」の原作『指輪物語』(評論社)などが、映画の公開とともにヒット商品となった。



(16)雑誌の部数とABC公査 (2003年11月25日号掲載)
 町の本屋さんで、いつも賑わっているのが、雑誌コーナー。雑誌の語源のマガジンには、弾薬庫・弾倉・倉庫・フィルムの巻き取り容器などの意味があり、アラビア語の倉庫の意から、転じて「知識の宝庫」ということでマガジンといわれる。
 取り次ぎを通して、本屋さんに配送されている雑誌は三四八九点、そのうち、月刊誌が三三八三点、週刊誌が一〇六点ある。
 さて、気になるのがその発行部数。もちろん出版社にとっては、毎号どれくらい売れているのかが、その雑誌の生命線であり、読者の年齢、性別、趣味趣向、反応などに一喜一憂することも多い。
 広告主にとってはその雑誌の発行部数や読者層が広告媒体として重要な選択肢になる。
 日本雑誌協会では、加盟出版社の主要雑誌の平均発行部数を表示したマガジンデータや雑誌ごとの読者層を公表している。
 また、新聞や雑誌の発行部数の公査機関である日本ABC協会でも、半年ごとの平均実売部数を調査し、ABC公査部数を公表している。
 そのABC公査03年の上期のデータが公表された。調査対象になった週刊誌46誌の総販売部数は916万2020部で、02年の下期に比較して、6.21ポイント減。月刊誌78誌の総販売部数も957万0764部で5.82ポイント減と両誌とも大幅減の雑誌低迷状況を示す厳しい結果になった。
 「雑誌は時代を映す鏡である」といわれるが、雑誌のあり方が、いま問い直されているのかもしれない


©2003年 Shimomura