マルチメディアと出版の近未来


4.2  知的財産権と出版

*マルチメディアと著作権
 著作権法では、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されており、著作物の例示として「言語、音楽、舞踏や無言劇、美術、建築、地図、図形、映画、写真」などがあげられていました。
 これに1985年(昭和60年)の改正で「プログラム」が追加されたことから、元々“表現物”を対象にしていた“著作物”の概念がどちらかといえば“アイデア”などを保護してきた工業所有権法(特許法や実用新案法など)的性格も含むようになった。
 そして、データベースも情報の“選択性”又は“体系的構成”などに独自の“創作性”が認められれば、単なる編集著作物でなく、独自の“データベースの著作物”として保護されることになった。
 マルチメディアの著作物とは、「文字、音声、静止画、動画などの多様な表現形態の情報を統合した伝達媒体またはその利用手段で、単なる受動的な利用でなく使用者の自由意思で、情報の選択、加工、編集等ができる双方向性を備えたもの」(著作権審議会の答申案)と定義されており、コンピュータソフトやデータベースの著作権の延長線上の“特異”な著作物として立案される方向性にある。
 マルチメディア自体の著作権法上の問題として、その著作物性、制作に係る権利の帰属、利用に係る権利の内容、利用に係る権利の制限などの諸点が議論されており、新しい概念を作りあげるため時間をかけて検討が継続されている。
 文化庁では、画像・音声・データなど幅広い著作権を一元的に管理するための「著作権権利情報集中機構(JTCIS);仮称」を発足させる構想を進めており、マルチメディア著作権の法制化に先立って、「マルチメディアソフトの素材として利用される著作物に係る権利処理」について、製作者・権利者間の契約における許諾範囲の明確化、利用者による改変と同一性保持権との関係、権利所在情報の提供体制の整備、権利の集中管理の必要性などの環境整備を急いでいる。



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