マルチメディアと出版の近未来


3.4  DTPの導入ポイント

*豊富な経験と印刷の基礎知識
 編集職場での電子編集用のシステムの導入のためには、まず何よりも“導入の目的”意識を明確にし、システムの価格はもとより、導入面での技術的課題、組版技術の修得、ランニングコストの検討、編集労働の変容に伴う労働面での検討などが重要になってくる。
 要は編集製作上、どのように利用し、どの範囲までを編集労働として取り込むのか、編集者として、製作工程上の品質管理、工程管理、コスト管理の三つの面から捉えることが重要だといえる。
 また昨今では、ディジタル化された情報の著作権上の帰属をめぐって印刷所とのトラブルも発生しているので、今後、自社内で“情報のディジタル化”を進行させる出版社が増加してくると考えられる。
 DTPを始めると、今まで印刷所まかせになっていた、組版の基本ルールやレイアウトの手法、さらには製版の基礎知識、カラー印刷のメカニズムなどの基本的なスキルが要求される。
 例えば、よくデザイナーから“ディスプレイ上では、もっとあざやかなカラーなんですよ”と言われることがあるが、コンピュータのディスプレイ画面は、透過光で見ているのと、色の三原色のR(レッド)、G(グリーン)、Bv(ブルーバイオレット)から成り立っている。
 これに対して、印刷の世界では反射光を見ていますし、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の三原色とBk(ブラック)の組み合せですべての色の再現を行っている。
 また、ディスプレイ上の色は、350dpi(ドット・パー・インチ)と解像度で表現されますが、印刷の世界では、カラーだと175線というふうにインチあたりの網点の線数で表される。
 カラーだけではなく、フォント(書体)の種類などの幅広い知識も要求される。英語の世界だと256字で大半の文字と記号を表現できるが、日本語はJISの第一水準で3200文字、第二水準で6800文字と多種類である。英語ではカーニングの思想がはっきりしているが、日本語組版では漢字とひらがな、数字、英文字と独特のカーニング技術(ツメ打)が必要である。
 画像情報にしても、EPS、TIFF、PICTなど多種類のデータに慣れることが必要だし、アプリケーションソフトもバージョンアップされますから、印刷所とのシステム環境を合わせておく必要もある。


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