マルチメディアと出版の近未来


2.8  電子メディアの近未来

 電子メディアの最大のネックはマルチメディア・プラットホーム間のデータの互換性は保障されていないことである。各種のマルチメディアの可能性が”新しい文化”を生み出すともいわれているのに、皮肉にも、“ハード間の互換性がない”という壁に、電子メディアは再びぶちあたったということになる。
 “いつでも、どこでも、だれでも”が使える“情報家電”ができるのは、21世紀まで待たなければならないといえる。 高度情報化社会のインフラストラクチャ(社会的基盤)が完成するのは、そう容易でないという暗示でもあるといえる。

*高度情報化社会のインフラづくり
 1993年9月に発表されたアメリカのクリントン・ゴア政権のNII全米情報基盤)構想に刺激される形で、各国とも21世紀の情報スーパーハイウェイともいえる情報インフラ(社会的基盤)構想を発表している。
 日本の高度情報推進本部の構想によると「誰もが情報通信の高度の便益を安心して享受できる社会」「社会的弱者への配慮」「活力ある地域社会の形成への寄与」「情報の自由な流通の確保」「情報通信インフラの総体的な整備」「諸制度の柔軟な見直し」「グローバルな高度情報通信社会の実現」など7つの行動目標が掲げられている。
 アメリカは、21世紀を目標に全米に光ファイバーを使ったISDN(総合ディジタルサービスネットワーク)を国家的プロジェクトを推進しており、ヨーロッパでもアジア各国でも2005年〜2010年を目指し“情報スーパーハイウェイ”の各国版を展開している。
 高度情報化社会が実現するには、多くの技術的課題があり、“さまざまなメディアを統一”して“使い勝手のよい”ネットワークとハードシステムを育てるというコンセプトを発展させない限り、この壁をブレークスルー(突破)することはできない。
 もっとも技術以前の問題として、私たちは、良質のソフトを提供するという日常的な出版活動が問われていることになる。


©1998年/2000年 Shimomura