マルチメディアと出版の近未来


2.5  電子ブックの特徴

*電子ブック用のプレーヤの特徴
 電子ブックは、手のひらに乗せられる携帯用の電子ブック専用の再生電子ビューアで見ることができ、ファミコンのように簡単な操作で、ミニCDに収録されている文字情報や図形情報を液晶ディスプレーに表示でき、同時に音声の情報も楽しむことができる。
 1990年に、この電子ビューアーを最初に商品化したのは、ソニーの“データディスクマン”であるが、後続のハード・メーカーも規格を統一したため、“電子ブック”がマルチメディアタイプのニューフェイスとして、一躍注目を注びるようになった。
 以後、わずか数年の間に、CD-ROM版と区別して、電子ブックが相次いで発売され、現在では、国内で250タイトル、世界で500タイトルを超えている。専用プレイヤーの普及も120万台を越え、また、電子ブックの仕様を12cm CD-ROMドライブに公開したことにより、今後、パソコンユーザーへ電子ブック市場が広がる可能性も出てきた。

*電子ブックの特徴
 『電子ブック版広辞苑』(岩波書店)、『現代用語の基礎知識』(自由国民社)、『ホームクリニック』(主婦の友社)、『英語でしゃべるマンガ日本経済入門』(日本経済新聞社)、『電子ブック版大辞林』(三省堂)、『日米ことわざ慣用句辞典』(三修社)など出版社系のソフトには、自前の優良ソフトである辞書や事典やヒット商品の電子ブック化が目立つ。
 ハードの普及とも関連して大ヒットといえる電子ブックは、『電子ブック版広辞苑』など一部の商品を除き、まだ目立たないが、一つの可能性の追及としては、興味深い開発テーマの一つだといえる。

*CD-ROMや電子ブックへの開発スタンス
 CD-ROMは、大容量であることに最大の特徴があり、辞書や事典のようなデータベース型のソフトがあることが前提になる。そして、ランダムアクセスが可能という検索性を重視したスタンスとどのハードを選ぶのかによってもシステム環境が違ってくる。
 データベースの構築の仕方、キーワードの抽出の仕方などパートナとしての印刷会社やハードメーカーとの協力なしには商品開発の進まない新しい課題が山積みしているといえる。
 加えて、マルチメディアタイプのソフトとなると、音声や画像データの取り扱いなど編集労働の領域が一挙に広がり、本の編集というよりは、ビデオや映画のシナリオづくりや、ビジュアル化のノウハウが要求されてくる。著作権の処理も含めて大変な課題に直面しているともいえる。


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