マルチメディアと出版の近未来


2.3  CD-ROMと電子辞書

*CD-ROMの誕生
 CD-ROMは、最初、記憶容量の大きさから、文字情報を中心に発展しました。主として、印刷会社のCTS化(電算写植化)の進展により、辞書や辞典類の電子化された情報が印刷会社のコンピュータの情報として蓄積されていた。その情報の受け皿(媒体)として注目されたのがCD-ROMといえる。
 日本で最初のCD-ROMソフトは、1985年に出版された三修社の和英独三ヵ国語の『最新科学技術用語辞典』である。続いて、1986年には、三修社は、日英独仏伊蘭西に中国を加えた8ヵ国16冊の辞書を一枚のCD-ROMに収録したマルチ言語の『CD-WORD』を出版し話題を呼ぶ。
 1987年には、岩波書店から『CD-ROM広辞苑』が出版され、電子出版が大衆的にも注目され始めた。
 CD-ROM商品が開発された1986年ごろには、CD-ROMの読み取り機能を持つドライブは25万円もし、CD-ROMを誰でも楽しめる環境は、整ってはいなかった。今日では、Windows95に刺激されたパソコンの急速な普及と、CD-ROMコンバータ内蔵型パソコンの増加により、CD-ROM市場が拡大されている。
 また、雑誌の付録にCD-ROMが認められたことにより、CD-ROM付きの雑誌やMOOKが増加し、雑誌の平均定価が上ったり、売上増につながっていると分析されている。
 一方、フロッピイディスクを利用したディジタルブックの方は、ハードが普及せず、市場形成に失敗したと思われる。専用の電子ビューアーとミニCD-ROMを使う電子ブックの方は、一定の市場を形成しているが、タイトル数は250前後とあまり増加していない。
 CD-ROMによる電子辞書は、今日では、多くの商品が開発されており、インターネットへのリンク機能や動画や音声の情報も強化され、より多機能なDVD-ROM(デジタル多用途ディスク)へと進化してきている。
 なお、1986年に設立された日本電子出版協会(JEPA)には、現在、193社が加盟し、情報交換や技術的研究会などを活発に行っている。


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