マルチメディアと出版の近未来


1.9  ブック・オン・デマンドへの挑戦

*電子書斎コンソーシアムの発足と挫折
 98年10月、出版業界は、通産省の補助金を受け、電子書斎コンソーシアム(加盟140社)を発足させ、ブック・オン・デマンド・システムの実用化に向け、実験を開始した。
 この構想は、デジタル化された出版物を通信衛星やインターネットを利用して、全国の書店やコンビニに配信し、読者は、そこに設置された販売端末から、「デジタル情報=本」を受信し、高精度な液晶ディスプレイで「本を読む」というもの。
 「空から本が降ってくる」と話題を呼び、99年11月から開始された本実験に、3500点もの「デジタル・コンテンツ」が提供され、業界からは、熱い視線が注がれていたが、2000年3月「商業化の目途が立たない」とのことで、「実験は打ち切り」となり、電子書斎コンソーシアムも解散された。
 今後、その開発の精神は、日本電子出版協会に引き継がれることになったが、「安価で、高精度な液晶ディスプレイの開発」と「豊かなコンテンツ」の提供が鍵となる。

*アメリカのオープン・e-Bookの成功
 また、アメリカでは、同様の構想として、インターネットを利用した「オープン・e-Book」構想を発足させている。
 オープン・e-Bookは、ホームページの記述言語として、世界中に広まったHTML系のデータを使用するが、その圧縮データを暗号化することにより、コピー防止の機能を付加することもできる。
 オン・デマンド・ブックの標準プラットフォームをめぐる動向は、不透明であるが、インターネットを通じての「デジタル小説」から、50万部を超えるベストセラーが生まれるなど、世界に先駆けて、「デジタル配信」が成功を収めつつある。


©2000年 Shimomura