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◎ 今月のプログラム
 出版メディアパル著作権相談室

著作権相談室
「知らないと損する著作権の基礎知識」(2)
出版メディアパル編集長 下村昭夫

著作権の相談室より

編集者からの質問にお答えして

■ 質問1
 個人出版で、古代ギリシャ美術を解説する本を作りたいとして、著者が観光用絵ハガキを大量に使いたいといってもってきました。 問題点は?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 古代ギリシャの美術品の著作権は切れています。著者自身が撮影したものであれば、写真の著作権は、その著者にありますが、絵葉書の写真の著作権は、その絵葉書を撮影したカメラマンにあると推定されます。したがって、絵葉書を使用した場合には、「複製権」違反に問われることになります。

■ 質問2
 辞典の解説などよく雑誌・TVで引用されますが、「使用」にあたる場合はあるのでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
A:たとえば、『広辞苑』によると、「○○---」であるというふうに解説すれば「引用」に当たりますが、辞典の解説されている記事を自分の意見のように発言したとすれば「使用」に当たります。

■ 質問3
 厚生労働省のホームページから、一部を改変して引用した表の出典表記をめぐって、クライアントともめたことがあります。クライアントは、一部改変しているにも関わらず、「ホームページからの引用でいいのではないか」の一点ばりでしたが、いかがでしょうか。
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 引用の条件は、自分の意見が「主」で、引用個所が「従」の関係にあること、また、「原文のまま(同一性保持権)」、引用することが大切です。 改変した場合には、たとえ、「出所明示」があったとしても引用ではなく、「使用」にあたり、「同一性保持権」の侵害と判断される恐れが十分にあります。

■ 質問4
 日本の著作権法 は発生主義、アメリカは方式主義という話を聞きましたが、国による特徴があれば教えて下さい。海外、とくにアメリカの出版社と提携しているため、知識が多少なりともあれば、と思っております。
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 現在では、アメリカもベルヌ条約に加盟していますので、基本的に日本の著作権法に適法していれば、問題はありません。しかし、アメリカでは、「適法引用」の規定がなく、「公正使用(フェアユース)」という概念で判断され、適法引用の条件を満たしていても「訴えられる」ケースがあります。翻訳物をアメリカで発行する場合には、要注意です。

■ 質問5
 「著作物の引用」は適法引用でなければいけないということですが、発行元の出版社に電話して「使ってもいいよ」と言われれば、特に問題はないということでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 公表された著作物は 、適法な範囲内であれば、許諾の必要なく、「引用」して利用できます。著作権は、基本的に著作権者にあり、出版社に権利があるわけではありません。したがって、許諾願いに「YesまたはNo」という権利をもっているのは著作権者(多くの場合には「著作者」)であり、出版社の編集担当者が、著作権者への断りなしに「使ってもいいよ」という返事するのは慎みたい行為といえます。

■ 質問6
 著作権保護期間70年への延長は長すぎると思うが、どう思われているかお聞かせ下さい。
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 著作権の保護期間が50年が適切か、70年が適切かは意見の分かれるところです。国際的には、「70年」が基準になっており、日本の著作権法が50年のままだと、「権利の保護に無理解な国」と判断されます。そのための法改正が準備されており、「賛成」「反対の両世論が白熱しています。なお、2003年にアメリカの著作権法で「映画の著作権の保護期間が90年」に延長されたことを受け、日本の著作権法も2005年に、映画の著作権のみ、「公表後70年」に延長されています。

■ 質問7
 法律や会計の解説、説明は著作物として保護の対象になるのでしょうか。なるとするとどの著作物に分類されるのでしょうか。「思想」または「感情」のどちらに該当するのでしょうか。
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 法律の条文そのものは、誰でも使用できますが、「法律や会計の解説、説明」は言語の著作物といえます。「思想」か「感情」かは、表現された文章で判断されますが、一般的には「思想」の表現と思われます。

■ 質問8
 商品名に対して、どう向き合えばいいのですか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 著作権法と商品名との直接的な関係はありません。しかし、同じ商品名の品物を発売すれば、商標法や不正競争防止法で訴えられる恐れは十分にあります。たとえば、「瀬戸大橋」などは登録されており、菓子類の名称には使えませんが、「ういろう」は、既に一般名称化しているということで違反に当たらずとの判例があります。

■ 質問9
 記事や見出しにおける書名(パクリも含めて)の引用で注意する点は?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 一般に書名だけでは「著作権」の対象にはなりません。「日はまた昇る」「風とともに去りぬ」など、見出しなどに使うケースがしばしば出てきます。また、「我輩は猫である」を真似て「我輩は主婦である」という番組がありますが、違法ではありません。ただし、似たようなタイトル名をつけた番組が訴えられたケースはあります。なお、漱石の著作権は既に切れていますので(死後50年経過)、誰の許諾もなしに「我輩は猫である」を発行することは可能です。

■ 質問10
 著作物の使用の事後許可取得は許されないのですか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 許諾なしに使用すれば「無断複製=違法複製」ということになります。仮に、発行後、「無断複製=違法複製」に気づき、「お詫び状」と「許諾願い」を出すというケースはないわけではありませんが、著作権者の了解がそれで得られれば、「事件性」はなくなるということになります。

■ 質問11
 描いた人が亡くなった絵の場合、著作権は絵の所有者にあるのか、あるいは描いた人の相続人にあるのか教えて下さい。
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 絵画が売買されて場合、絵画の所有権は、買い手に移りますが、一般的に著作権は美術家にあります。したがって、その死後は、財産権としての「著作権」は遺産相続人に移ることになります。

■ 質問12
 テレビなどの小道具としての使用が判断に迷います。
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 家具や家庭用品など、同じものを製作すれば、意匠法や商標法に触れる恐れがありますが、小道具として使用することは可能です。しかし、その背景に絵画や写真などの「著作物」が撮影される場合には十分な配慮が必要になるケースも考えられます。

■ 質問13
 寺社仏閣などの所有する古い時代の仏像、建築の写真に関して、使用料をとられる場合がありますが、著作権上はどうなっているのでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 基本的には、古い時代の法隆寺や金閣寺などの建築物や仏像としての「著作権」は消滅しており、自由に使用することは可能です。したがって、掲載しても「著作権料」を支払う根拠は何もありません。ただし、写真の著作権はカメラマンにあるので、撮影者(著作権者)の許諾が必要になります。
その上で、写真を撮るに当たって、お寺の何らかの「協力」があったとして、その「協力」に対する「謝礼」を支払うことは、著作権とは別の問題として、解決すべきだと思います。神社やお寺の方は、建築物や仏像などの所蔵や文化財の管理・運営などを根拠に、一定の「謝礼(写真の使用料)」を要求していると言えます。著作権法の問題ではなく、編集実務上の「協力費」として、検討されてはいかがですか?

■ 質問14
 一時期、JRが鉄道写真に関して使用料を求めたことがありましたが、法律上認められることでしょうか?
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 現在でも、JR東海などは、「使用料」を求めてくるケースがありますが、自然環境の中の「新幹線」などは、風景の一部として撮影したとしてもJR側に「何の権利」もありません。自由にその写真を利用することは可能です。

■ 質問15
 実例で間違えやすい事例、10年留保、戦時加算など、日常あまり生じない部分は不安が多いです。注意すべき点をお教え下さい。
■ 回答(お問い合わせの件、下記のように考えます)
 現行法の著作権法では「10年留保」という規定はありませんが、1970年以前に海外で発行された著作物で、原作が発行されてから、10年以内に、日本でその翻訳された出版物が発行されなかった場合に、旧法では「翻訳権」が消滅していました。 1971年以降の著作物は、死後50年の保護期間が適用されます。
 また、「戦時加算」とは、戦前の著作物または戦前に死亡した著作者の著作物については、太平洋戦争の勃発した日(1941年12月7日、日本時間12月8日)から、旧連合国の中でそれぞれの国が平和条約を締結した日(たとえば、サンフランシスコ平和条約の締結日。1952年4月27日。日本時間4月28日)まで、著作権法の保護期間に加算される日のことをいいます。
 したがって、アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、カナダなどは「3794日」加算されます。なお、この「戦時加算」は、日本だけが負っている負の遺産であり、解消されるように日本の努力が求められているといえます。

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