本作りこれだけはQ&A 出版技術講座


4.1  著作権の基礎知識 1

Q:知的財産権とは、どんな定義ですか?
A:知的財産権とは、人間の知的活動から生まれた無形の財産に対する権利を言い、英語のintellectual property rightの訳語です。
知的創造のうち、精神的・文化的創作を保護するものが、著作権法であり、物質的・産業的創作を保護するものが、工業所有権法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)です。
Q:著作物とは、どんなものを指すのでしょうか?
A:著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽に属するものをいう(著作権法2条1項一号)。」と定義されています。
したがって、著作物とは、「人間の思想または感情の表現であること」「表現に創作性があること」「文芸、学術、美術または音楽に属するもの」「外部に表現されたものであること」などの条件が備わっているものということになります。
Q:著作物の種類には、どんなものがあるのですか?
A:著作権法では、「言語の著作物」「音楽の著作物」「舞踊・無言劇の著作物」「美術の著作物の著作物」「建築の著作物」「地図の著作物」「図面・図形の著作物」「映画の著作物」「写真の著作物」「プログラムの著作物」などと例示を揚げています(10条1項)。
裁判所が著作物であると判断したものに、「漫画のキャラクター」「昆虫の挿絵」「職業別の電話帳」「ルールブックの解説書」などがあります。
裁判所が著作物でないと判断したものに、「タイプ・フェイス」「船荷証券の用紙」「オリンピックマーク」「自然科学における法則」「五十音別の電話帳」「編物の段数早見表」などがあります。また、「キャチフレーズ、スローガン、題号(タイトル)、アイディア」なども、著作権法では保護の対象とされていません。
Q:フォントに著作権なしとのことですが、その字体を作った人の権利はないのですか?
A:文字の字体そのものは情報伝達の手段であり、共有の文化的財産であることから、タイプ・フェイス(文字書体)そのものには著作権は認められていません。しかし、写植業者がライバル社の書体の文字盤をそっくり真似た事件では、「不正競争防止法」の「類似商品」として、模倣を退けています。
Q:図表や図面の著作物の場合、作図をやり直せば、よいのでしょうか?
A:著作権は、「表現物」そのものを保護しています。作図をやり直しても表現されている内容が同じなら、新しい著作物にはなりません。著作権者の許諾が必要です。この場合、その図面を「引用」するのであれば、引用の条件(主と従の関係、明瞭区別、同一性保持、出典明示)などを守って適法利用に心掛けてください。
Q:他社の「西洋画集」にあるモナリザなどの絵画を転載することは、可能ですか?
A:著作権の保護期間の過ぎている著作物は、パブリック・ドメイン(公有)となり、誰でも自由に使用出来ます。
「絵画」などの平面的な作品を撮影した写真は、著作物性が認められていません。「画集」そのものをそっくり真似るのでなければ、使用可能です。


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