3.5 さまざまな出版流通
Q: | 日本の流通ルートには、どのようなものがあるのですか? |
A: | 出版流通の最大のルートは、何といっても「取次ー書店ルートです。次のような特徴をもっています。 *取次―書店ルート;正常ルートとも呼ばれ、出版物の70%を担う最大の流通経路 *取次の機能:仕入れ、集荷、販売、配達、調整、倉庫、情報、集金、金融 *二大取次;70%(トーハン、日販)、その他30%;大阪屋、中央社、日教販、大洋社、栗田 *取次協会加盟;46社(出版社;4561社) * 3年連続マイナス成長;2兆4607億円(−3.2%) *書籍:9936億円(−1.6%)、販売部数;7億9186万冊、返品率;39.9%、新刊点数;65026点 *雑誌:1兆4672億円(−4.2%)、販売部数;35億3700万冊、金額返品率;29.6% *コンピュータ配本:書店の大きさ、立地条件、販売実績によるシミュレーション配本 *新刊配本:仕入れ、送品票、発送、梱包、仕分けコンベヤによる流れ作業(スピーカソータ) *トーハンの一日の注文票38万枚;新刊委託+補充注文+客注;梱包量;4万個+雑誌30万個 *新刊+雑誌中心型「小品目・大量」委託商品:「早く+安く」送品する世界最大の配送システム *短冊:販売記録+販売回数記録+注文票+ピッキング指示書+注文品送付票+事故伝票+販売報奨金 |
Q: | その他には、どんな販売ルートを持っていますか? |
A: |
*直販ルート:学研やベネッセコーポレーションなど出版社直属の代理店による販売 *通信販売ルート:新聞や雑誌広告などにより、読者から直接注文を受ける販売 *教科書ルート:都道府県にある教科書特約供給所を通じての販売 *生協・農協ルート:生協・農協・大学生協などによる販売(取次経由);割引販売可能 *鉄道弘済会ルート:JRのキオスクによる週刊誌、文庫などの販売(週刊誌の30〜40%) *新聞販売ルート:新聞販売店を利用した新聞社系の週刊誌などの販売(出版社系→私鉄ルート) *割賦販売ルート:セールスマンによる百科事典や高価本の販売 *CVSルート:コンビニによる雑誌、コミック、文庫などの販売 *宅配ルート:宅配業者が取次と提携して始めた「本の宅配」方式による販売 *地方出版物ルート:地方・小出版流通センターを通じての小出版社の販売 *その他、図書館ルート、輸出入ルートなどがあります。 http://www.bekkoame.ne.jp/~much/access/shop/shoppage.html |
Q: | その出版流通に「今、何が、求められている」のですか? |
A: | 大量の雑誌や新刊書の委託配本では、すぐれた配送システムですが、一冊一冊の注文に対応するシステムとしては、「客注品が遅い」と書店さんや、読者からの要望が、絶えません。いわば、次のような、ドイツのリブリ社のような即日対応型の配送システムが望まれています。 *ドイツ:取次ルート:30%、リブリ社;35%(フランクフルト;15万点+ハンブルグ;30万点) *79年;EOS(電子注文システム)の無料配布、83年;出版社の在庫管理業+発送業を代行 *93年;カタログのCD-ROM化、無料配布(46万点)、発送拠点;22箇所、配送費;書店負担 *書店マージン:出版社仕入;42%、リブリ仕入;35%(午後7時までの受注;翌日開店前入荷) *DCの機能;注文対応型「大型倉庫+物流」、買切制+返品なし、オンライン受発注+データ管理 |
Q: | 日本の出版流通業界では、どんな改善に取り組んでいるのですか? |
A: | 「出版VANの確立」や「須坂共同倉庫の建設」「取次各社のオンラインシステム」「書店VANの確立」など、さまざまな努力は積み重ねていますが、山積みされている課題に効果的な配送システムの確立には至っていません。 1.「出版VAN(231社)」+「書店VAN」+ 取次各社のオンラインシステムの状況 *出版VAN;商品管理、注文情報、取次情報、販売情報、商流情報、金融情報、メディア変換 *書店VAN;「BIRD―NET」+ SA化の推進;POSレジの普及;書誌検索+受発注+伝票作成 *取次各社の独自VAN;「仕入・販売・物流」+「情報」提供による新出版流通システムの構築 2.「須坂共同倉庫」構想 *「出版社のすべての希望に応える流通基地、誕生」:構想10年;平成13年着工(建坪9400坪) *参加見込出版社数:100社(現在60社)、出庫冊数;1日あたり10万冊、保管冊数;3000万冊 *雑誌中心型配送システムから「書籍中心型配送システム:多品目・少量・長期・繰り返し」へ *共同倉庫によるコスト減+受注翌日配送+「書協BOOKSのデータベース利用;流通可能60万点」 3.「出版サプライチエーンマネジメントコンソーシアム」の実証実験 (SCM → 物・金・情報の統合) *1999年5月;業界4団体+出版社8社+書店6社+取次1社など;出版界横断型;2001年2月 *「読者を基点とした出版流通改善」「統一出版書誌データベースの構築」;2000年2月まで |
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