本作りこれだけはQ&A 出版技術講座


1.5  校正の基礎知識

Q:英文の校正の注意事項は、また、校正記号は世界共通ですか?
A:校正記号は、西欧の活版組版術の伝来とともに日本に輸入され、和文用に改良され、慣用的に使用されてきましたが、1934年に日本印刷学会が、これを整理し同学会制定の校正記号として公表、1965年にJIS記号として再整理されたものです。
日本では、誤植部からの引き出し線の末端に赤字を加えるパスライン方式が一般的ですが、欧米諸国では、誤植部を斜線で消して、その行の左右の欄外の余白に赤字を加えるブックシステム(欄外式)が一般です。英文の校正記号としては、イギリス標準規格、オックスフォード・ルール、アメリカン・ルールなどがあります。
欧文の校正の注意事項としては、一般に、「組幅の指定寸法」「行間の均一性」「語間スペースの適正」「異書体の混入」「大文字、小文字の区別」「スモール・キャピタル、イタリックなどの使用」「文節法」などが、とくに注意すべき事柄と言われています。
Q:校正の疑問点などを鉛筆書きした箇所は、誰が整理するのですか?
A:校正者の仕事は、「原稿どおり」が基本です。原稿の疑問箇所は、編集者の責任で整理します。著者校正などのあとで整理確認することになります。
Q:赤字が本文にかかる方法は一般的なのでしょうか?。また、校正記号だけでは不安です。ルビや傍点の記号には、「ルビ」「傍点」などと添書きしなくともよいのですか?
A:校正記号は、印刷現場とのコミュニケーションの共通言語です。基本に忠実に、各社の社内ルールに従って「ハッキリと簡明に理解できる」方法をマスターしてください。行間に逃げるのも一方法です。
Q:用語の統一など、他の表記と比べて、原稿を整理するのはよくないのでしょうか?
A:本の性格、目的などにより、用字・用語・漢字の使い方など、編集の考え方で原稿整理の方法は違ってきます。要は、「編集者や校正者の思い込み」に陥らないで、「著者の考え方や表記法を尊重」しながら、正確で多様な判断が求められているのです。
Q:行頭に「、」や「。」などが来た場合どうするのですか?
A:禁則処理の一つです。行頭に置くことを避けたいもののは、句読点「、」「。」、中黒「・」 雨だれ「!」、耳垂れ「?」、受けの括弧類などがあり、できれば、ダッシュ「―」、リーダー「…」拗促音「っ」などの小文字も避けたいものです。
また、行の終わりに括弧類の始めが来ることや連数字、単位記号の分離なども避けたいものです。
この他に、小見出しなどの泣き別れ(頁や段に分割されること)や、一つの章の最後の1行だけが、ページの冒頭に残り、その下が空白(ウィンドウ)になることも禁則です。
Q:歴史上最大の誤植は、「姦淫聖書」といわれていますが、その意味をお教え下さい。
A:「汝、姦淫するなかれ」の「not」を脱落したために、「汝、姦淫するべし」と誤植し、廃棄された聖書のことです。正に「校正畏るべし」と心したいものです。


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