本作りこれだけはQ&A 出版技術講座


1.3  本の作り方の基礎知識 3

Q:印刷の三大様式の特徴をお教えください。
A:出版物を印刷するには、原稿、版、印刷機、用紙、インキの五つの要素が入ります。
 1. 活版(凸版)印刷の特徴
 本の歴史とともに歩んだ、最も古い印刷様式、他の様式に比べ、「校正の差し替え、組み替えが早い」「週刊誌など短時間で作業するものに適している」などの特徴があるが、「印刷スピード、大量生産」など、時代の流れと共に、消滅しつつある。
 2. オフセット(平版)印刷の特徴
 オフセットは、版(刷版;さっぱん)から、いったん転写胴(ブランケット)にインキを移し(offし)、次に紙に転写(set)する印刷方式です。凸版に比べ、「スピードが速く、大量生産に向いている」「どんな紙にも印刷できる」「紙以外の金属や木材などの特殊印刷が可能」「製版がグラビア(凹版)に比べ、簡単」などの特徴がある。
 3. グラビア(凹版)印刷の特徴
 グラビア印刷は、写真術を用いた印刷様式で、とりわけ。「写真など原画の再現性に富み、大量且つスピーディな印刷ができる」が、「円筒に直接製版し、凹版を作るため、オフセットのような手軽さが無い」などの特徴がある。
Q:雑誌などで「編集人」と「発行人」が書かれていますが、役割にど のような違いがあるのでしょうか?
A:一般の「商品」を考えて下さい。例えば、「ソニー」の製品です。
 もちろん、製品を「製造・発売」しているメーカーの名前と住所、製造担当部署などは明記されていますね。
 なぜ、出版物だけは、発行人や編集人を明記するのでしょうか? 意外な、歴史的背景があります。
 古くは、1722年、南町奉行大岡越前守が、「わいせつ書」の取締のため、書物に「作者並びに板元(版元)」の名前を明記することを定めた布令をだしたことに由来します。
 その慣習が、1869年(明治2年)の「出版条例」により、「著述者、出版人、売社人」の明記につながり、1893年(明治26年)の「出版法」により、検閲強化のための「奥付」の義務づけにつながります。
 もちろん、戦後は憲法により、「言論の自由・出版の自由」が保障され、「検閲」は禁止されていますが、「慣習」的に「奥付」が残り、「発行人」など記載されています。
 さて、お尋ねの「発行人」と「編集人」の違いですが、多くの例は、発行人には「社長名」、編集人には「編集長名」などが記載されているようです。
 いずれにしても、現代では、「慣習」的なことで社会的な意味合いはありません。


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